なぜジーターは引退興行で巨額を稼いだのか
近年では、元ヤンキースの守護神リベラや元ブレーブスのチッパー・ジョーンズのように生涯1球団で現役を貫いたフランチャイズ選手が、シーズン前に予め引退表明するケースがある。去就がチームに大きな影響を及ぼす選手の場合、前もって公表することで球団は来季への舵取りをし易くなる。 ジョーンズの場合は「シーズン中、各地で何度も同じ質問で騒がれて同僚に迷惑を掛けたくなかった」と言っていた。将来殿堂入りの対象となるような名選手の場合は引退を表明すれば、遠征で訪れる各地で功績を讃えるセレモニーが行われたり、花道を飾る球宴に選ばれたりもする。だが、ジーターほど、大きな興行となった例はないだろう。 同選手が1996年に設立した個人の慈善事業財団「Turn 2 Fundation」は、これまでに約1900万ドル(約19億円)の基金を募っているという。 何故ここまで、彼は金をジェネレートできるのか。米国の経済雑誌フォーブス電子版のバンライター記者は 1 ヤンキースという名門でビッグマーケットの選手だったこと 2 5つのチャンピオンリング 3 薬物違反と無縁だったこと 4 安定した成績 5チーム優先の慎み深い人間性、という5つの要素を指摘している。 MLBが薬物使用違反で、NFLが家庭内暴力など、米スポーツ界がスキャンダルに揺れる昨今。スポーツ選手の一般社会への影響は大きい分、地に堕ちたアスリートに世間の目は厳しく、近年は大手スポンサーが安心して個人契約を結べない時代でもある。そんな中でジーターの存在が際立つのだろう。 さて監督やコーチ業に興味はないと公言しているジーターだが、将来は球団の買収を夢に描いているという。本拠地の引退記念式典に出席した元同僚のリベラは「彼はずっとそう言っていたし、きっと実現させるだろう」と語り、セリグ・コミッショナーも「そうなれば素晴らしいし、支援を惜しまない」と語った。生涯年俸約2億6500万ドル(約265億円)に加えて、ナイキ、ローリングスなどスポンサー企業から1億3000万ドル(130億円)、すでに総額4億ドル(400億円)を稼いだ男は、すでに児童書籍の出版や健康食品などの事業を手がけている。ジーターという“金のなる木”は、現役生活に別れを告げてもなおビジネスを生み続け、その規模を大きくしていくのかもしれない。