アギーレがベテランを再招集した舞台裏
この間、アギーレ監督は機会があるごとに、親善試合を「アジアカップへ向けた選手選考」として位置づけてきた。代表経験が浅い選手たちがチームに生き残るために、対戦相手よりもベンチの指揮官から向けられる視線を多少なりとも強く意識していた点は否めない。 結果としてピッチ上の11人がチームとなり得ず、アギーレ監督が就任会見で標榜した「堅守」も「速攻」も実践できない状況が続いている。11月の2試合でも同じ内容が繰り返されれば、必然的に指揮官の手腕にも懐疑的な視線が向けられてくるだろう。 そうした雑音が大きくなる前に封じ込めるためにも、及第点に達しなかった新戦力よりも計算がしっかりと立つベテラン勢の経験を重視し、年内最後の舞台で内容を伴った勝利という結果を残しておきたい。ワールドカップ・ブラジル大会を戦ったチームへの実質的な回帰は、誰よりもアギーレ監督自身が自信を得たい証と言ってもいいのではないだろうか。 特に最終ラインの前にアンカーを配置し、逆三角形型で組ませる中盤に関しては、9月の初陣から招集してきた細貝萌(ヘルタ・ベルリン)、田中順也(スポルティング)、森岡亮太(ヴィッセル神戸)の3人をあえて外した。アルベルト・ザッケローニ前監督時代はセンターバックを務めた今野を「ミッドフィールダーだ」と明言した上で、アギーレ監督は新たな選手構成を練っている。 「今野は中盤の3つのポジションのどこでもプレーすることができる。遠藤を含めて経験が豊富な選手であり、(所属クラブで)素晴らしいシーズンを送っている。フィジカルコンディションも非常によく、柴崎(岳=鹿島アントラーズ)のように、代表のキャリアをスタートさせた若い選手の力にもなる」。 9月の2試合でアンカーを務めた森重真人(FC東京)はDF登録となり、本職のセンターバックに専念することが濃厚となった。10月は細貝と田口泰士(名古屋グランパス)がアンカーを務めたが、前者はボールを奪ってからのつなぎの面で、後者は守備面で及第点に達しなかった。