アギーレがベテランを再招集した舞台裏
今シーズンの今野は、ガンバでは遠藤とダブルボランチを組んでいる。ボール奪取力にも定評がある今野をアンカーに配置し、前方のインサイドハーフに遠藤と長谷部を並べる「現実的」な布陣、言い換えれば世代交代よりも勝利を優先した布陣も十分に考えられるわけだ。 ワールドカップには出場していないが、FW陣にはJ1で3シーズン連続15点以上の実績を残している29歳の豊田陽平(サガン鳥栖)も約8か月ぶりに復帰させた。意図を問われた指揮官は「ありがとう」と質問を歓迎した上で、こう説明している。 「豊田は違ったものを代表チームの攻撃に持ち込んでくれる。パワフルで空中戦に強く、岡崎(慎司=マインツ)とは違った特徴がある。彼のゲームを見て、誇りを持って、誠実にプレーする選手であり、代表に呼ぶべき選手だと思った」。 180cm以上の長身FWに関しては9月にルーキーの皆川佑介(サンフレッチェ広島)と大迫勇也(ケルン)、10月にはハーフナー・マイク(コルドバ)が招集されたが、皆川と大迫は結果を残せず、ハーフナーは試合出場すらかなわなかった。 攻守両面で献身的な豊田の一挙手一投足を躍進中のルーキー、武藤嘉紀(FC東京)に学ばせる狙いもあるはずだが、ここでもゴールという結果を最優先させたのだろう。日本サッカー協会の霜田正浩技術委員長が極秘で渡独し、代表引退をほのめかしていた内田の意向を確認したしたのも、右サイドバックで計算が立てられる選手が見つからなかったからに他ならない。 就任以降の親善試合をアジアカップへのオーディションと自ら位置づけてきた以上は、オーストラリアの地では前任者が果たした優勝という結果を求められる。今後は12月9日までに予備登録メンバー50人をアジアサッカー連盟(AFC)に提出し、最終的に23人に絞っていく。 「11月の2試合は何かを試すわけではない。アジアカップのことを考えながら、ワールドカップにも出場している、レベルの近い2か国に勝ちに行く試合だ。ジャマイカ戦では明らかに日本が相手を上回っていた。いい方向に進んでいると思っている」。 U‐19代表やU‐21代表から飛び級で若手を抜擢することもできたが、勝利を最優先命題として据えた結果として「新陳代謝」あるいは「育てる」という選択肢が消去された。ピッチに立つ選手がザックジャパン時代のそれに限りなく近づくベクトルを示しながら、チームは10日から愛知県内で合宿に入る。 (文責・藤江直人/スポーツライター)