「構想26年」…話題のミステリ、小説をコミカライズ 電子コミック市場で後発の「ハヤコミ」勝算を聞いた
2025年に創業80周年を迎える出版社「早川書房」(東京都・千代田区)が今夏、新コミックサイト「ハヤコミ」を立ち上げました。SFやミステリの翻訳ものに強い同社は、「国内外の古典や名作をコミカライズする」という方針を固めて電子コミック市場に参入、4ヶ月が過ぎました。 【漫画】「同志少女よ、敵を撃て」サンプルページ 現在「ハヤコミ」では「ミステリの女王」アガサ・クリスティーの孤島ミステリ「そして誰もいなくなった」を二階堂彩氏が、スタニスワフ・レムの傑作SF「ソラリス」を森泉岳土氏が、そして2022年の本屋大賞および高校生直木賞を受賞した小説家・逢坂冬馬氏のデビュー作にして累計50万部突破のベストセラー「同志少女よ、敵を撃て」を鎌谷悠希氏がそれぞれ漫画化するなど、計11作品をサイトにて掲載中です。 また先日、同サイトは「日本電子書籍出版協会(JEPA)」による「電子出版アワード2024」の「エクセレント・サービス賞」に「Amazon Fliptoon (アマゾンジャパン)」。「ジャンプTOON (集英社)」、「コミックシーモア (NTTソルマーレ)」などのそうそうたる顔ぶれとともにノミネートされるなど、広く世間の注目を集めつつあります。 運営後に見えてきた課題や展望、そして「電子コミック業界」という巨大市場に切り込んだ手ごたえはあったのか、詳しい話を「ハヤコミ」吉田智宏編集長(48歳)にお聞きしました。
苦節26年
――なぜコミックのサイトを立ち上げようと? 私はもともと漫画が大好きで、実家の階段下の中二階の小部屋をすべてコミックで埋めた漫画部屋にするような少年でした。ですから、ハヤカワに入社する26年前の面接試験でも「漫画の編集をやりたい」と言ったんですが「うちは漫画をそこまでやっていていない」と返され絶望したものです。しかし苦節26年、あきらめずに機会を待ち続け、プロジェクトとして「ハヤコミ」が立ち上がったことを嬉しく思っています。 ――実際にサイトを運営してみていかがですか?課題は見えてきましたか? 狙いも課題も想定していたものでした。現在電子コミック界は空前の活況で、大手のプラットフォームや出版社のサイトが群雄割拠の状態で、それらに対し後発である弊社は一般漫画読者獲得において、量的には競争力でおよばない部分が出てきます。しかし「ハヤコミ」はまた別のターゲットも視野に入れて存在感を確立できたらと思っています。