国土の7割を覆う森へ、5割の人が行かない。''林業漫画家''平田美紗子さんが語る森に行くことのススメ
── すごい! 菌類は森林の環境を守る"陰の立役者"なんですね。 そうなんです。でも、ほとんどの人にとってはきっと初めて知ることばかりですよね。 日本は国土の7割が森林で、森の恩恵を受けているのに、そのことがまだまだ知られていない。私はそうした現状をもったいないと感じていて、一般の方にも森の機能や魅力をたくさん知っていただきたいなと思い、林野庁に就職したんです。
「地球温暖化」も「クマ出没」も森へとつながっている
── 森が持つ機能には、どのようなものがあるのでしょうか。 土砂災害を防止する「土壌保全機能」や、空気をきれいにする「快適環境形成機能」など、さまざまな機能があります。 とくに知っていただきたいのは「生物多様性保全機能」です。 菌根菌がいないと植物が陸上で生きられないというお話をしましたが、実はそうした生態系のつながりって、自然界のあちこちにあるんですよね。「ミツバチがいないと植物は子孫を残せない」といった事例もその一つ。森の環境においても、多様な生き物が存在することによって、生態系のバランスを整えています。 最近では、クマをはじめとした野生動物が住宅街に出没するニュースが全国的に話題になっていますよね。実はあのニュースも、人とクマとの生態系バランスが崩れた事例の一つです。 昔はクマと人との緩衝地帯として存在していた里山の森林に人の手が入らなくなり、クマの恰好の隠れ家となりました。さらに、ナラ類などのどんぐりをつける木が成長してエサ場となり、クマと民家の距離が近くなってしまったことも要因の一つと言われています。 ── 森の機能不全が、私たちの生活にも影響を及ぼす。森と人の生活は、思った以上に近いところにあるんですね。 そうなんです。人間には関係ないように見える存在でも、かなり密接なかかわりを持っていることが少なくありません。 そういった意味で、人間も生物多様性の中の一つに含まれているんだという意識をきちんと持って、生活していくことが大切なんじゃないかなと思います。