技能五輪国際大会に挑む、日産の技術者が語る自動車整備の魅力
世界の若き匠が持ち前の技能を競う第47回技能五輪国際大会が9月10日―15日にフランスのリヨンで開かれる。隔年開催だが前回はコロナ禍の影響で15カ国の分散開催だった。久々に1国に技能者が集う大会へ「モノづくりニッポン」代表で臨む主な選手を紹介する。 特集・技能五輪国際大会(フランス・リヨン) 「知識や技術など自分の力で自動車が直っていく。やりがいや達成感があり、その瞬間が1番楽しい」。日産自動車の村上快仁選手(20)は自動車整備の魅力を熱く語る。 父親が自動車整備の仕事をしていたことが縁で、小さい頃から自動車は身近な存在だった。「尊敬しているのは父。学生の頃から自動車について父と話をしていた。自動車が好きなのは父の存在が大きい」という。 競技として自動車整備に向き合うきっかけとなったのが宮城県気仙沼向洋高校の部活動だ。顧問の先生から技能五輪で自動車整備をする自動車工職種があることを教わった。「自動車整備で日本一、世界一を目指せる。自分の知識や技術を磨きたい。人生で1回しか挑戦できないのならばやってみたい」。 自動車工職種で技能五輪の常連である日産に入社。地道に力を蓄え、入社1年目から技能五輪全国大会で金賞を受賞。2年目には連覇を果たし、世界大会の切符をつかんだ。「顧問の先生が教えてくれていなかったら技能五輪を知らずに別の道に進んでいたかもしれない」と振り返る。 自動車工職種はエンジンの分解・整備や足回り、電気関係といった自動車に関する幅広い知識や技術が求められる。最近では電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)なども課題に含まれる。「自動車の全てを自分の力で整備しなければいけない。それぞれの分野の知識をいかに蓄え、競技本番で発揮できるかがポイント」と指摘する。 「自分は結構マイペース。周りが一気に進めているような雰囲気でも一つひとつの物事を自分のペースで進めていきたいタイプ」という。それは技能五輪に通じるところもあり、全国大会、国際大会の選手となり感じることが多いという。指導員を務めるTCSX(トータルカスタマーサティスファクション本部)国内サービス部の佐藤勇心さんも「世界大会はわずかな点差の勝負になる。確実に点を取れるかが重要で一つひとつステップを踏みしっかりやるところが強み」と村上選手に期待をかけている。 「泣くやつ三流 食いしばるやつ二流 果てなく笑え、そいつが一流」がモットーだ。「最後に笑えるぐらい後悔しないよう全部を出し切る。絶対に金メダルを取り、お世話になった人に恩返しをしたい」。世界の舞台で最高の笑顔を届ける。(編集委員・村上毅) 【自動車工】 実際の自動車や単体エンジンなどを使用して分解、組み立て、点検整備をする課題と、実車やシミュレーターを使ってエンジンの制御や車体電気装置の制御故障を診断し修理を実施する課題に大きく分かれる。自動車整備に関する内容を八つの課題に分類し、1課題2時間で競技を行う。自動車に関する幅広い知識と整備の技能力を生かし、点検から修理、測定、故障診断まで、迅速かつ確実な作業をすることが求められる。