コメの高騰で苦悩する回転寿司チェーン。最高益が相次ぐ好調4社と明暗分かれた“かつての王者”
原価率が4%も低下
特に注目すべき点は原価率が40.7%と前年同期比44.6%を大きく下回っている点だ。飲食店にとって最もウェートが高い原価率が4%も低下することは費用構造的に大きく、これが営業利益率が上がった主な要因になっている。メニューの拡充を図りながら、粗利ミックスを活用して原価を適切にコントロールしているようだ。 2024年10月期決算はまだ公式に発表されていないが、11月2日に発表された10月度月次情報によると、全店売上は前期比106.4%と好調に伸ばしている。既存店ベースでも、通期で前年同期比、売上104.1%、客数98.6%、客単価105.5%と、わずかな客数の減少があるが客単価上昇で補っており、売上も伸ばしている。 くら寿司は、全店舗に店舗支援システムがあり、本部から全店舗を見ることができ本部から運営における援助をすることができる。そして、一皿110~150円まで6段階に均一価格ごとに店舗を分類して管理している。立地の需給バランスを勘案して店舗群を集約しており、柔軟に対応しているようである。
“回らない回転寿司”を標榜する「魚べい」
業界4位の魚べい(国内185店、海外241店、2024年3月時点)の業績は著しい伸びを見せている。そもそもは元祖回転寿司である「元禄寿司」のフランチャイズから独立し、「元気寿司株式会社」へ社名変更している。廻らない回転寿司を標榜し、袖看板にも明示している。各テーブルには特急レーンで届ける仕組みである。 親会社は伸明ホールディングスで米の卸売り事業を展開する非上場企業である。米の卸会社が垂直統合で回転寿司チェーンを展開し、その強みを最大限に発揮している。親会社と子会社がシナジー効果を発揮し、利益を享受し合うのは当然。伸明はアグリフード・バリューチェンの構築を目的に川上事業(生産者支援)・川中事業(食の加工)・川下事業(中食と外食に参入)を垂直統合した食関連の多角化を実践している。 ちなみに親会社の神明は営業利益率49.8%とほぼ半分が利益という圧倒的な収益力だ。国内外で426店舗出店していて、内訳は国内185店、海外241店と海外のほうが多い。ブランド別では国内は魚べいが169店、元気寿司は9店と国内は魚べいブランドに経営資源を集中しているようだ。しかし、海外では逆に元気寿司が225店、魚べいが6店、本格志向の寿司チェーン千両が26店となっており、地域ごとにブランドの棲み分けを行っている。