セカンド→サードへのコンバートに高木 豊氏は「安易に考えるな」と警告
プロ野球では首脳陣が打撃に専念させたい選手を、守備の負担が少ないポジションにコンバートさせるケースがある。体力が落ちてきたベテランが対象になることも多く、今季は楽天の浅村栄斗(33歳)やロッテの中村奨吾(32歳)がセカンドからサードにコンバートされたが......共に思うような成績を残せていない。 かつて大洋(現DeNA)などで活躍した高木 豊氏も、「そううまくいくとは限らない」と警鐘を鳴らす。自らのコンバートの経験も踏まえながら、その難しさについて語ってもらった。 * * * ――セカンドからサードにコンバートされた浅村選手や中村選手は、共に打率2割台前半(6月24日時点。以下同)と期待された打撃面で苦しんでいます。 「年齢からくる体力、打球への反応の衰えなどを考え、打撃に専念してもらうためのコンバートだったと思いますが、攻守で足を引っ張ってしまっていますね。共に守備では、打撃で取り返せないぐらいのミスもしています。 浅村に関しては、楽天の今江敏晃監督がスタメンから外したり、打順を下げたりしていましたが、その決断も理解できます。実際に、浅村の打順を下げ、鈴木大地を4番にしてから打線がつながりました。楽天は交流戦で初優勝しましたが、今江監督の決断が功を奏したと思います」 ――一方の中村選手は、昨季を含め、セカンドで3度ゴールデングラブ賞を受賞(浅村も19年にセカンドで受賞)した選手ですが、サードでは精彩を欠いています。 「焦ってしまっているんでしょうね。守備でのミスが多く、打撃にも悪影響が出ています。昨季は打撃が良くなかったので再起を図るためのコンバートでもあったと思うのですが、より悪化していては本末転倒です。 ロッテは中村に引っ張り回されないほうがいいと思います。これまでの実績にとらわれることなく、サードは安田尚憲と上田希由翔を中心に回していっていいんじゃないかと。それと、おそらく中村は、サードよりもファーストのほうが絶対にうまいと思いますよ」 ――その理由は? 「〝守備の方向〟の問題です。セカンドとファーストは投手の左側のポジションですから、打球の速度や質、切れ方などがよく似ています。なので、セカンドでの経験が豊富な中村は、ファーストなら打球の処理もしやすいでしょうし、すぐに慣れると思います。 現在ファーストを守ることが多い(ネフタリ・)ソトもベテランですし、彼を休ませたいときの守備固めなどでの起用でもいいと思います。 一方、セカンドを長く守った選手がサードにコンバートされるのは本当にしんどい。僕も現役時代、長くセカンドを守った後、キャリア晩年にサードを守った経験がありますが、守っているときの感覚がおかしくなるんです。浅村や中村も、多少なりともそう感じていると思います。 大げさに思えるかもしれませんが、『プレーする球場が日本からアメリカに変わるくらい景色の違いがある』といってもいいぐらいです」