セカンド→サードへのコンバートに高木 豊氏は「安易に考えるな」と警告
――それだけ、方向の違いは影響が大きいんですね。 「そうですね。サードは動く範囲が狭く、内野手の中で最も運動量が少ないポジションともいえます。だから『セカンドよりもサードのほうがラクだ』と思われることが多いのですが、浅村も中村もそう思ってはいないはずです。 安易に『守備の負担を減らすためにセカンドからサードへ』なんて考えられてもちょっと困る、というのが個人的な意見です」 ――ほかにセカンドとサードの守備での違いはありますか? 「サードのほうがファーストまでの距離が遠くなるので、肩の強さが要求されます。ステップを踏みながら投げられれば、肩が弱くても強い送球ができますが、打球の質によって上半身主体で送球する場合はきついです。 加えて、打者との距離は近くなるので、打球が速いですからそれを止める力も必要。守ることにそれだけ神経を使うことになれば、打撃に悪影響が出るのも必然です。年を重ねて力が落ちてきた選手、スランプに陥っていた選手がセカンドからサードにコンバートされると、よけいに影響が大きく出てしまうと思います。 コンバートされたすべての選手がそうなるとは限りませんし、早く適応して打撃も良くなる選手もいるとは思いますよ。だけど、特にベテランになってからサードにいくのは厳しいですよ」 ――巨人の坂本勇人選手も、昨季の途中からサードにコンバートされましたが、同じ投手の右側を守るショートからのコンバートはそれほど影響がないのでしょうか。 「そうですね。ショートとサードは見える景色もそれほど変わりませんし、やりにくくはないはずです。ショートよりもかなり速い打球が飛んできますが、打球速度は慣れればいいですから。 仮に、長くショートを守っていた坂本がセカンドにコンバートされたとしたら、体の使い方が逆になるので、遅かれ早かれ故障をしていたでしょうね」 ――セカンドからサードへのコンバートがひと筋縄ではいかないにしろ、守備の負担が減ることは事実ですし、やはり打撃で貢献しなければいけない? 「それを期待されている部分も大きいわけですからね。浅村は、最近の試合では当たりが出始めましたが、もっと打たないと。中村も、59試合に出場していて打点9は寂しすぎます。まだまだシーズンは長いので、奮起を期待したいですね」 取材・文/浜田哲男 写真/共同通信社