東海道新幹線50年「歴史編」 国内外の要人を魅了した「夢の超特急」
いまから50年前の1964年10月1日、東海道新幹線が開業しました。時速210キロメートルで走り、東京-新大阪間を約3時間で結ぶ新幹線は、斜陽化していた鉄道を復権させました。開業50周年にあたり、東海道新幹線の歴史を振り返ってみましょう。
■英エリザベス女王と中国トウ小平氏
新幹線が産声をあげたのは1964年です。この年は東京オリンピックが開催された年でもあり、高度経済成長を象徴づける東海道新幹線は “夢の超特急”と呼ばれました。 夢の超特急・0系新幹線は、先頭車両のデザインが丸みを帯び、親しみやすい顔は国民の間にも浸透しました。そして、多くの国民が新幹線に乗車しています。 日本国民のみならず、0系は諸外国の要人がたくさん乗車しました。なかでも特筆すべき出来事だったのが、1975年に乗車したイギリスのエリザベス女王です。女王が来日したとき、国鉄はストを決行中でした。そのため、東京から関西への往路は新幹線ではなく飛行機を使いました。帰路はストが解除されたこともあり、名古屋駅から東京駅まで乗車しました。 『新幹線と日本の半世紀』(交通新聞社新書)の著者・近藤正高さんは「エリザベス女王は乗車後に『新幹線は時計よりも正確だと聞いております』と発言しており、スピードもさることながら正確なダイヤに興味があったようです」と指摘します。 エリザベス女王を乗せた新幹線は、ほぼ定刻で東京駅に到着しました。イギリスは鉄道発祥の国であり、その国家元首が新幹線に乗車することは日本の鉄道員にとっても晴れの舞台です。新幹線の運転士をはじめ、運行に携わった人たちは、その矜持を見せつけたといえるでしょう。 その3年後、中国のトウ小平(トウは登におおざとへん)副首相(当時)が来日し、新幹線で東京-京都間を移動しました。「当時の中国の鉄道はまだ蒸気機関車が主力だったはずですから、新幹線は何より、近代化の象徴としてトウ小平の目には映ったと思います」(近藤さん) トウ小平氏はのちに最高指導者の一人として中国の改革開放路線を推し進めました。経済成長した中国では、計画中のものも含めて高速鉄道の建設が急ピッチで進んでいます。これらはトウ小平副首相が来日した際の乗車体験がかなり影響を与えたと推測できます。