なぜ[シエンタ]が年間登録車販売ナンバーワンなのか? 実は[フリード]との間にも明確な違いがあった!!
■コンパクトでも車内は広く、ハイブリッドの設定もメリット
ミニバンが実際のサイズよりも大きく見えるユーザーは多い。そのためにシエンタの開発者は「全長を4300mm以下(先代型と同じ4260mm)に抑えることは、開発の大切な条件だった」と振り返る。 シエンタは全高も1695mmで、1700mm以下に抑えた。ノア&ヴォクシーは、全長が4695mm、全幅は1730mmの3ナンバーサイズで、全高も1895mmと高い。ノア&ヴォクシーを見た時に「大きくて運転しにくそう」と感じるユーザーに購入してもらうには、シエンタの全長を4300mm以下、全高も1700mm以下に抑えてコンパクトに見せることが絶対に必要だった。 ちなみにライバルの新型フリードは、フルモデルチェンジを行って全長が4300mmを超えた。全高は以前から1700mmを上回る。フリードの全幅はAIRが5ナンバーサイズをキープしたが、SUV風のクロスターは1720mmに広がって3ナンバー車になった。つまりフリードは、シエンタとは対照的に、コンパクトでも大きく見えるミニバンらしさを重視する。 前述の販売店ではシエンタとルーミーの違いについて、シート配列と乗車定員のほかにハイブリッドの有無も挙げていた。ルーミーにはハイブリッドが用意されないが、シエンタでは選択できる。 そしてシエンタの登録台数に占めるハイブリッド比率は70~80%に達する。つまりコンパクトで車内の広いハイブリッド車を求めるユーザーが、必然的にシエンタを選んでいる事情もある。
■価格の安さもシエンタの武器
シエンタが好調に売られる理由として、価格の安さも挙げられる。中級グレードの「ハイブリッドG」(7人乗り)は、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能、低速域で衝突被害を軽減させるパーキングサポートブレーキ、後方の並走車両を検知するブラインドスポットモニター、両側スライドドアの電動機能などを標準装着して、価格は272万7500円だ。 ノア「ハイブリッドG」(7人乗り)の価格は、シエンタハイブリッドGよりも約60万円高い332万円だ。しかもアルミホイールは標準装着するが、ブラインドスポットモニターと右側スライドドアの電動機能は、シエンタハイブリッドGと違って標準装着されずオプション設定になる。このようにシエンタは、ノア&ヴォクシーと比べて、買い得度でも明らかに上回る。 言い換えればシエンタは、ノア&ヴォクシーの大きく見える外観、主力グレードが300万円を超える価格などを敬遠するユーザーを視野に入れて開発された。実際にシエンタは狙いどおりの役割を果たして、好調に売られているわけだ。 そしてこの特徴は、唯一のライバル車とされるフリードとの競争でも有利になる。特に新型フリードは前述のとおりボディを拡大させ、外観の見栄えも立派になった。価格も先代型に比べると、装備の違いを補正して10万円ほど値上げされている。 シエンタ「ハイブリッドG」(272万7500円/7人乗り)に相当するフリードは、e:HEV 「AIR EX」(304万7000円/7人乗り)だ。フリードe:HEVAIR EXには、シエンタハイブリッドGが備えていないアルミホイール、前席シートヒーター、後席クーラー、本革巻きステアリングホイールなどが備わるが、価格差はさらに大きく約32万円に達する。 シエンタはフリードに比べて価格が安く、燃費も優れ、運転しやすい印象がある。フリードは価格が高い代わりに、外観が立派で2列目にはセパレートタイプのキャプテンシートが用意され、ミニバンらしさが濃厚だ。両車ともコンパクトミニバンだが、コンセプトやターゲットにしているユーザーが異なるため、今後も共存が可能だろう。