「先生、私は胃がんですね」 医師を驚かせた東ちづるの一言 「コース料理を食べられなくなる」と切除を拒否
食べることは人生の喜び
「胃の切除によって失うものといえば食欲だよねって考えたんです。食べることは人生の喜びの一つ、とても重要だったので『コース料理を食べられなくなるのは嫌なんです』と言って、削ることを選んだのです」 担当医は「そんなことを言われたのは初めて」と言いつつ東の選択を受け入れた。 「医者として(がんと)疑わしきものを見つけたら切除するというのが今の日本のスタンダード。そのように勧めることになっていることを知りましたが、私は削る処置を選び、おなかに穴を開ける腹腔(ふくくう)鏡手術にもせず、胃カメラ室で内視鏡を使って患部を取る『内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術』にしてもらいました。退院するとき、先生の耳元で『先生ならどうしましたか』と訊いてみたら『削る方を選びました』って答えてくれたのを覚えています」 さらに「こんなにちゃんと話をした患者さんは初めて。とても勉強になりました」と去り際、感謝の言葉までもらったという。 それより10年ほど前、大好きなゴルフからも、トレーニングからも遠ざかっていた東には、また別の試練がふりかかった。長い事実婚の末に入籍して7年後、夫の堀川恭資氏が突然、中枢神経系の障害による運動障害ジストニアによる難病「痙性斜頸(けいせいしゃけい)」を患い、2年間寝たきりになってしまったのだ。 病名は分からない日々は不安にかられ、判明しても今の医学では治療法はないと医師から告げられた。そんな五里霧中の中で介護を続ける東に堀川氏は「僕は治るかな」と1日に何度も聞いた。そのたびに、こう答えたそうだ。 「治るよ」 その夫からは「どうして治ると思うの」と問い詰められたが、「どうしても」と強調した。何の根拠もなく言い続けることで自分自身を削っていくようで、東も精神的に追いつめられていった。しかし、それでも鍼灸に漢方、西洋医学など、身体にいいと言われているようなものを調べてはすべて試した。不自由な夫を連れて行き、治療を受けさせた。 「たしかに治療法はないけれども、命を落とすような病気ではない。先天性でもないので、変化はできる。だから治ると信じて、そのためにできることは何でもやろうと決めたんです。東洋医学から西洋医学、宗教以外なんでもやりました」