石破茂首相就任で初めて「主流派」に 大臣記者会見のオープン化を働きかけたフリーランス記者が見た「閉じられた首相会見」
こういった動きは、政府の会見にも及んだ。民主党政権時代、首相会見に参加できる資格を得たフリーランスは約15名。しかし、2012年に自民党が政権復帰してから2024年10月1日時点で新たに参加資格を得たフリーランスは1名だけしかいない自民党政権に戻ったことで、明らかに記者クラブのオープン化は停滞し、部分的には後退もしている。
石破首相の新任会見は「閉じていた」
手のひら返しは、自民党に限った話ではない。非権力側から権力側へと転じた政治家たちは、態度を一変させがちだ。ほかの政党でも実際に起きている。 石破首相も自民党内で非主流派だった頃は記者会見を積極的にオープン化して雑誌・ネット・フリーランスの記者が多く参加していた。しかし、総裁選後に実施された新任会見は平河クラブの限定になり、内閣が発足した直後の新任会見も内閣記者会以外は人数制限が厳しく、どちらも閉じているという印象しか感じないものになっていた。 官邸で実施される記者会見が、「閉じたもの」になったのは石破首相になってから起きたことではない。先述したように2012年に自民党が政権復帰してから兆候が現れていた。2012年から2020年まで続いた安倍政権下ではフリーランスに質問させないように会見で指名しないという姑息な手段も用いられた。 そして2020年に新型コロナウイルスが感染拡大すると、その対策として、いわゆるソーシャルディスタンスを取る必要があったために人数制限の措置がとられた。これを機に首相会見に参加できる記者は約半分に減らされ、フリーランスは一回の会見に2~3名しか参加できない状態になった。それが現在も続いている。 官邸報道室によれば、「参加者が多数の場合は、公平を期してあみだくじで参加者を抽選している」という。すでに前任の岸田文雄首相のときからコロナ禍は収束している。以前の状態に戻せば、あみだくじで記者を選別する必要はないはずだが、記者会見をコロナ禍以前の状態に戻そうという気配はない。 筆者は10月1日の新任会見に参加したが、相変わらず参加できる記者の数は制限されていた。新政権が発足してから、まだ1か月も経っていないので見限るには早すぎるかもしれない。そのうち、こうした状況が改善されていくかもしれないという淡い期待はあるものの、筆者は10月9日に開かれた首相会見にも再び出席できたので、石破首相の記者会見に対するスタンスに変化が見られるのかを窺ったが、特に変わった様子は見られなかった。手のひら返しが多い石破首相だけに、今後も期待はできない。 記者会見に参加できる記者の人数を絞ることは、2009年から進めてきた記者会見オープン化の流れとは逆行する。記者会見に参加できる人数を制限することからは、情報を自分たちの手で管理して、記者や国民をコントロールするという意図が透けて見える。 そうした情報をコントロールすることで、政治を、報道機関を、そして国民を統制下に置きたい――これらは昔ながらの自民党体質と言わざるを得ない。裏金や統一教会の問題に切り込めない石破首相は、こうした古くから続く自民党体質を変えられるだろうか?
【関連記事】
- 【総裁選の内幕】自民党議員にとっての争点は「どの総裁が日本を変えるか」ではなく「議員バッジの確保」だった…石破政権の背後には岸田前首相の影
- 《総選挙の行く末》自民党反主流派の旗頭となった高市早苗氏が「高市新党」で戦う可能性も 「かつての宮沢政権下の小沢一郎氏に似ている」との指摘
- 【自民党総裁選の内幕】「最後の最後でしゃしゃり出た派閥のボス」蓋を開ければ終わっていなかった派閥政治、能力不足は百も承知で担ぎ上げられた小泉進次郎氏
- 乗り鉄、軍事マニア、猫好き…石破茂新首相の“オタク伝説” 妻・佳子さんは「周りに自分の趣味を押し付けない人」と理解
- 《石破茂首相が爆誕へ》苦しい下積み時代にアイドルから学んだこと「自分の意見に興味を持ってもらえるきっかけになる」