石破茂首相就任で初めて「主流派」に 大臣記者会見のオープン化を働きかけたフリーランス記者が見た「閉じられた首相会見」
当時、フリーランスの記者だった筆者は多くのフリーランスと連携・協力し、各省庁の大臣会見を雑誌・ネット・フリーランスにも開放するように各記者クラブや省庁の大臣会見の担当窓口に、いわゆる記者会見のオープン化と言われる提案をしてまわったが、一筋縄ではいかなかった。 通常、各省庁内の会見室で実施される大臣の定例会見は、会場こそ省庁の管理下にあるが、主催権は各省庁の記者クラブが有している。つまり、大臣は自発的に会見を開催しているのではなく、記者クラブに大臣が呼ばれているという体裁になっている。そのため、筆者が各省庁の担当職員にオープン化を打診しても「私たちには主催権がありませんので……」で話し合いは終了してしまう。一方、記者クラブ側にオープン化を呼びかけても「庁舎の管理権は私たちにはありませんので……」という理由で話し合いにならない。 そんな堂々巡りの状態は、民主党政権で金融担当大臣に就任した亀井静香氏が打破してしまう。亀井大臣は記者クラブが雑誌・ネット・フリーランスの参加を拒否していることを理由に、記者クラブ主催の会見後に大臣主催の記者クラブに加盟していない記者向けの第2会見を実施。大臣という多忙な身でありながら、会見を2つもこなしていた。以後、原口一博総務大臣(当時)や岡田克也外務大臣(当時)といった大臣会見がオープン化された。そして、首相会見にも雑誌・ネット・フリーランスであっても記者として参加できるようになった。 首相会見はオープン化されたが、すべての記者が無条件で参加を許されているわけではない。首相会見に参加するには官邸報道室が課した条件を満たしているか、審査を受ける必要がある。審査の結果、的確とみなされた記者は参加資格を得られ、そのうえで、会見が拓かれるごとに参加の申し込みをしなければならない。 この会見参加資格の継続にも条件がある。直近3か月に毎月1回は新聞協会・雑誌協会・インターネット報道協会などに記事を寄稿しているか、民放連加盟社の番組に出演していなければならない。 とはいえ、民主党政権になったことで固く閉ざされた首相会見に内閣記者会の記者以外が参加できるようになった。 このとき野党に転落した自民党も、記者会見について大きな決断をしている。存在感が縮小し、自民党に関する報道が少なくなった状態に危機感を覚えたのだろう、谷垣禎一総裁(当時)の会見がオープン化された。そして、2012年に自民党が政権復帰しても基本姿勢は変わらず、石破茂幹事長の会見は引き続き雑誌・ネット・フリーランス記者も参加できる状態になっていた。しかし、オープン化されていた幹事長会見はしだいに平河クラブ限定の状態に戻っていく。
【関連記事】
- 【総裁選の内幕】自民党議員にとっての争点は「どの総裁が日本を変えるか」ではなく「議員バッジの確保」だった…石破政権の背後には岸田前首相の影
- 《総選挙の行く末》自民党反主流派の旗頭となった高市早苗氏が「高市新党」で戦う可能性も 「かつての宮沢政権下の小沢一郎氏に似ている」との指摘
- 【自民党総裁選の内幕】「最後の最後でしゃしゃり出た派閥のボス」蓋を開ければ終わっていなかった派閥政治、能力不足は百も承知で担ぎ上げられた小泉進次郎氏
- 乗り鉄、軍事マニア、猫好き…石破茂新首相の“オタク伝説” 妻・佳子さんは「周りに自分の趣味を押し付けない人」と理解
- 《石破茂首相が爆誕へ》苦しい下積み時代にアイドルから学んだこと「自分の意見に興味を持ってもらえるきっかけになる」