「区政を変えたい」わずか187票差の劇的な結果となった草の根選挙がドキュメンタリー映画に 東京・杉並区長選、地元在住のペヤンヌマキ監督に聞いた
長く欧州に住み国際政策研究NGOの職員だった岸本聡子さん(49)が、わずか187票差で現職を破る劇的な結果となった杉並区長選のドキュメンタリー映画が完成した。タイトルは「映画 〇月〇日、区長になる女。」だ。撮影・監督を務めたのは区内に住む劇作家・演出家のペヤンヌマキさん(47)。自宅が道路整備計画の立ち退き対象であることを知り、区政に関心を持つようになった。 「私に批判的であってほしい」新人区長が意外な呼びかけをした真意 東京・杉並区長の岸本聡子さん、意見が異なる住民も期待感
杉並区長選では岸本さんを応援。映画では選挙戦の舞台裏に密着、岸本さんが「区政を変えたい」と願う住民たちと草の根選挙を戦い抜いた様子を描く。来年1月2日から上映が始まるのを前に、ペヤンヌさんに作品に込めた思いを聞いた。(共同通信=西村誠) ▽きっかけは地元の医院の張り紙 ペヤンヌさんは長年フリーランスの劇作家として活動してきた。20年ほど杉並区の阿佐ケ谷に住んでいる。演劇ユニット「ブス会*」を主宰し女性であるがゆえの悩みなど、自身の身近な問題を中心に取り上げてきた。 政治には関心がなかったが2019年、かかりつけの近所の医院にあった張り紙を読んだことが転機になった。医院のある一帯が道路整備の予定地になっていると書かれ、計画反対の署名を呼びかけていた。よく読むと、自宅マンションも立ち退き対象になっていた。 「高齢になった段階で住まいを奪われたら引っ越し先はあるのか。すごく身の危険、生活への不安を感じた」。ペヤンヌさんの暮らしと政治が結び付いた。
インターネットで調べ始めた。東京都などが整備を進める「都市計画道路」の一つに、自宅マンションのある地域を通る「補助133号線」という道路があること、都市計画道路は阿佐ケ谷だけでなく、高円寺や西荻窪でも整備が進んでいること…。反対の声を上げている住民グループがあることも分かった。 仕事が忙しくて実際の行動には移せないままだったが、昨年の初め、6月の区長選に向けて市民団体「住民思いの杉並区長をつくる会」が立ち上がったことを知った。 ▽映画は岸本区長誕生で終われない 現職は4選を目指すベテラン。立候補者の選定は難航し「住民思いの会」がやっと岸本さんを擁立したのが4月。ペヤンヌさんはキックオフ集会に顔を出した。「政治家になりたい人ではなくて、私たちと変わらない生活者だと思った」と好印象を抱いた。 それから、ボランティアでビラ配りに参加するようになった。岸本さんに「フリーランスで劇作家や演出家をしている」と話すと「杉並にはフリーランスで働いている人が多い。(政策で)『フリーランスが働きやすい街』というのはどうかな」とすぐに返答があり、同世代の2人は意気投合して喫茶店で語り合った。