「区政を変えたい」わずか187票差の劇的な結果となった草の根選挙がドキュメンタリー映画に 東京・杉並区長選、地元在住のペヤンヌマキ監督に聞いた
岸本さんに「活動を撮影してユーチューブにアップしようか」と提案し、街宣やタウンミーティングなどに密着するようになった。岸本さんの自宅でも話を聞いた。撮影機材や編集用のパソコンは仕事仲間に借り、慣れない動画制作を開始。「〇月〇日、区長になる女。」と題した動画を10本程度アップした。 前区長の区政に「住民不在だ」と疑問を抱いていた区民グループと、欧州に長く住み、公共政策を研究する国際的なNGOの職員として民主主義や地方自治の在り方を考えてきた岸本さん。「住民本位の区政を」との思いは同じだったが、政策の方向性や選挙活動の在り方などで考え方には溝もあった。 ペヤンヌさんはなかなか思うように進まない選挙活動に不満を漏らす岸本さんにもカメラを向けた。映画では「立候補をやめちゃうんじゃないか」と当時感じた不安も描いた。「ストレスになってほしくなかったから一時期距離を取ったこともある」 葛藤を越え、岸本さんは選挙戦を走り抜けた。ペヤンヌさんも本業をセーブして貯金でしのいだ。6月20日の開票日。187票という僅差での劇的勝利にペヤンヌさんは「人生の中でこんな興奮した日はない」と振り返った。
撮影を始めた頃から映画化の構想を温めていた。区長選が終わった後、「岸本区長が誕生したから『めでたし、めでたし』と終わる話ではない」と感じ、撮影を続行した。映画は今年4月の杉並区議選までを追っている。岸本さんと共に活動した女性らが次々と立候補し、女性が議席の過半数を占めるに至った。 ▽道路整備計画テーマの演劇を上演 岸本区長が誕生してから約1年半。道路整備計画などさまざまな課題の解決は途上で、変えていくことの難しさを感じる。「岸本さんが区長になっただけでは覆せない。区民が問われている。引き続き活動して行政に働きかけていくのが大事で粘り強くやっていくしかないのかな」。自身も地域住民が企画した勉強会や、岸本さんを招いて阿佐谷の道路整備予定地を一緒に歩く会に参加している。 昨年11月には「地域のことを知ってほしい」と、自ら企画、演出し、道路整備計画をテーマにした演劇「The VOICE」を上演した。JR西荻窪駅に近い劇場は整備が進む道路沿いにあり、立ち退きを余儀なくされてしまうという。