「味方でありたい」悩みと向き合う臨床心理士・みたらし加奈さんの願い 広がる〝お悩み相談〟への懸念
相談を受ける側に必要な視点は
悩みを打ち明け、識者が答える人生相談のコーナーは、昭和初期から新聞などで続けられてきました。現代では、X(旧Twitter)やInstagram、YouTube、TikTokなど、多くのSNSで「お悩み相談」が広がっています。 みたらしさんは「誰かが誰かのサポーターになるといった風潮はいいことだと思います」と話します。 一方で、「必ずしも相談のすべてを専門家に頼らないといけないわけではありませんが、例えば睡眠が取れていない、明らかに食欲が落ちているなど体に影響が出ているのに、精神論的な部分で補おうとするのは心配です。専門家に相談した方がいいラインとそうでないラインはすみわけが知られてほしい」と指摘します。 しんどさを感じている人たちが悩みを表出化して送ってくれたものに対して、受け手のメンタルヘルスへの影響を考えずレスポンスしていないか――。そんな危惧を抱いているそうです。 「専門機関に相談することとそうでないことの違いを理解した上で悩み相談を企画してほしい。マスメディアであっても、悩みに対して真摯に向き合ってほしいと思います」 ネット上のコンテンツには、関心を引くために見出しやサムネイル(トップに表示される画像)に強い言葉を使ったり、あおるようなデザインにしたりするものもありますが、その表現方法への懸念もあるそうです。 みたらしさん自身、インタビュー記事でキャッチーなタイトルを付けられることに違和感があるといい、自身の連載では刺激的な言葉を使わないように意識しているといいます。 「アクセス数が大事なのは分かりますが、YouTubeなど多くのサムネイルやタイトルに強い言葉が使われているので、受け手の方も心がまひしやすい現状があるのかもしれません」
「言語化する」だけではない
お悩み相談の多くは、そのモヤモヤを言語化することが前提となっていますが、みたらしさんは「言語化しなくてもいい」と話します。 「カウンセリングは言語化が求められる場所と思われがちですが、言語化が苦手な人もいます。絵や図にした方が話しやすい人もいたり、人によって言語化できるタイミングが違ったり、グラデーションがある。言語化できない人たちが取り残されてしまうことは避けたいですよね」 モヤモヤや悩みを表現する方法は何であれ、「表出することは大事」だといいます。 「メンタルヘルスにおいて『健康な状況』とは、『抑圧せずに、答えが出ないことをそのまま持っておける状態』でもあると思うんです。生きる意味や意義なんて、本来は考えなくていいこと。でも答えが出ないまま、心がモヤモヤしているのは苦しい。それを一緒に持っておけるのがカウンセリングだったり、サポートだったりします」とみたらしさん。 「その一方で『自分がモヤモヤしてる』と受け止めてあげる力をつけるためには、モヤモヤを分解していく必要がある場合もあります。分解してみると、意外とシンプルなことだったり、自分でフィルターをかけてしまったりしていることもあるかもしれません」と語ります。 そんな思いで、専門知識を生かしながら寄せられた「お悩み」に回答しているみたらしさん。 「自分の回答がその方の選択肢の広がりを1ミリでもサポートする支えになったらいいな、1本の枝ぐらいの支えになればいいなと思っています」と話しています。 ◇ ◇ ◇ 朝日新聞デジタルRe:Ronの連載「みたらし加奈の味方でありたい」では、読者のみなさまからの悩みやメッセージに答えるかたちで考えていきます。みなさまの声をお寄せください。 【応募フォームはこちら】 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdAAchIgWlWsf8VJNsMoLCWO-tpC-RQpys_AcEs2wVilA6Cxg/viewform 【イベント開催します!】 みたらし加奈さんも登壇する、withnewsの10周年イベント「【withnews10周年記念】ウェブメディア激動の10年 令和の温故知新フェス!」を、10月19日にオンラインで開催します。参加無料。 3部構成で、みたらし加奈さんが桃山商事代表の清田隆之さんと「モヤモヤのこれから」について語る第3部は、16時30分からの開催を予定しています。 出演者への質問も受け付けています。 【申し込み・詳細はこちら】https://withnews10th.peatix.com/