テレワークによる精神疾患で「労災」認定…心身の健康を害する前に労働者がとれる「有効な自衛手段」とは?
どのような証拠を揃えればよいか?
労基署に動いてもらうにしても、失業給付の特定受給資格者の制度を利用するにしても、証拠を揃える必要がある。 とりわけ重要なのは、労働時間、つまり何時から何時まで働いていたかを客観的に証明する証拠である。具体的に、どのような証拠をどうやって揃えればよいのか。 「まず、多くの企業では、テレワークの労務管理はPCでクラウド等を使って行われています。自分で労働時間のデータを取得するか、勤務先に頼んで出してもらえるならば、それが証拠になります」(松井剛弁護士) 勤務先にデータを提供してもらうことが期待できない場合や、労務管理がしっかり行われていない場合も考えられる。また、悪質な勤務先だと退勤時間について虚偽の報告をさせるケースもあると聞く。そういった場合にはどうすればいいのか。 「自分で記録をつけ、保存しておくことが望ましいです。ただし、なんでもよいわけではありません。たとえば、手書きのメモも証拠にはなりますが、それだけだと証明力には不安があります。」(松井剛弁護士) 重要なのは、後から改ざんできないような証拠を揃えることだという。 「たとえば、チャット等で始業と終業の報告をすることになっているならば、そのログを保存したり、画面をスクショして保存したりできます。 それができないなら、業務時間に送信した最初のメールと最後のメールを画面表示してスクショしたものも証拠として有効です。 あるいは、業務専用のパソコンならば、起動時間とシャットダウン時間のログをとっておく方法もあります。」(松井剛弁護士) テレワークの場合、それに加え、休憩等の離脱時間についても記録をとっておくことが望ましい。 「勤務先から『間に離脱していた疑いがあるじゃないか』と言われる可能性があります。なので、離脱した時間があるなら、その記録をとっておくことをおすすめします。 たとえば、離脱するたびにきちんと報告することにしておけば、十分な証拠になります。 また、業務用のチャットのやりとりやメールの送信履歴によって、休憩時間等で離脱する直前の履歴と、業務に戻った直後の履歴をとっておく方法があります。」(松井剛弁護士) もちろん、勤務先の側では離脱時間を含めて労務管理をする責任がある。しかし、労働者側でも、自衛手段として、離脱した時間も含めて記録を残しておくことが望ましいといえる。