クラウドの乗り換え妨害は独禁法違反 三菱商事子会社に排除措置命令
建設業向けクラウドサービスの顧客が競合他社に乗り換えるのを妨害したとして、公正取引委員会は24日、独占禁止法違反(取引妨害)の疑いで三菱商事子会社の「MCデータプラス」(東京都渋谷区)に排除措置命令を出し、発表した。クラウド事業をめぐる公取委の同命令は初めて。 MC社は、建設現場の作業員情報をクラウド上で管理し、労務や安全衛生管理の書類を作成するサービス「グリーンサイト」などを建設会社に提供している。建設業務系クラウド事業の市場規模は約50億円で、MC社は業界最大手という。 公取委によると、MC社は2020年ごろから「個人情報の保護」などを理由に、クラウド上のもとのデータを顧客に提供することを拒否。また、自社で作成した書類を他社で利用することを約款で禁止して通知するなどし、顧客と別のクラウド事業者の取引を妨害したという。 MC社は、作業員1人当たり最大100項目ほどのデータを囲い込み、顧客が他社のサービスに切り替える負担を増やすことで取引を妨害していたと公取委はみている。 公取委は、こうした行為によって公正な競争が阻害されているとし、同社に違反行為の取りやめと再発防止を求める排除措置命令を出した。 MC社は命令を受け、ホームページで「事実認定及び法令の解釈に関し見解の相違が生じている」などと記した。東京地裁に命令の取り消し訴訟の提起と執行停止の申立てをしたことを明らかにし、「司法の公正な判断を求めていく」などとした。 企業に提供したデータを別の企業に移すことができる「データポータビリティー権」は、デジタル・プラットフォーム(PF)事業者間の乗り換えの壁をなくすものとして、欧州連合(EU)では個人の権利として認められている。公取委の研究機関「競争政策研究センター」が21年にまとめた報告書でも、「PF間の競争を促す」としてデータポータビリティーの重要性を指摘している。(高島曜介)
朝日新聞社