海外メディアも注目する日本発のエッジAI半導体

　そのほかには日本発のEdgeCortix（2019年7月設立）への注目度も高まっている。 　EdgeCortixの特徴は、ソフトウェアファーストのアプローチにある。同社は、AIに特化したプロセッサアーキテクチャの開発に着手する際、ソフトウェアアプローチを用いてゼロから設計を行ったのだ。 　通常、半導体設計はハードウェアから始まるが、同社はソフトウェアの観点から設計を開始。これにより、AIソフトウェアの要求に最適化されたハードウェアの開発が可能となった。 　目標は、エッジでクラウドに近いレベルのパフォーマンスを実現しつつ、エネルギー効率と処理速度を大幅に向上させること。 　同社の最新製品「Sakura-II AIアクセラレータ」は、このアプローチを体現したものといえるだろう。EdgeCortixの公式情報によると、Sakura-IIは60テラ演算／秒（TOPS）の処理能力を持ちながら、消費電力はわずか8ワット。上記Hailoと同じくLlama2やStable Diffusionを稼働させることが可能で、この場合でも消費電力は8～10ワットに抑えられるという。 　Sakura-IIの効率性の鍵は、低レイテンシーのDynamic Neural Accelerator（DNA）にある。このランタイムで再構成可能なアーキテクチャ（稼働中にハードウェアの構成を変更できる仕組み）により、柔軟で高度に並列化された処理が可能になった。並列化とは、複数の計算を同時に行うことで、全体の処理速度を向上させる技術だ。 　EdgeCortixの技術は、防衛、ロボティクス、スマート製造、スマートシティ、自動車センシングなど、さまざまな分野のエッジAI課題に対応。こうした取り組みが評価され、2024年には世界経済フォーラムで、世界で最も有望なスタートアップ100社の1つに選出された。 　VentureBeatによると、EdgeCortixの顧客基盤は、日本が51％、米国が29％、残りがEMEA（欧州、中東、アフリカ）とインドとなっている。2023年には収益が急増、2024年にはさらに2倍の成長が見込まれるとのこと。