米機が民間初の月面軟着陸、JAXAスリムに続き“横倒し”に スリムは再復活
米企業の無人機が月面への軟着陸に成功した。民間による天体への軟着陸は史上初。米国としてはアポロ計画以来、半世紀ぶりの月面軟着陸となったが、機体は6本足での直立ができず横倒しとなった。日本の「スリム」も先月20日に横倒しとなっており、着陸の難しさを物語る。一方、スリムは夜の寒さを克服し地上との通信を再開したと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が26日、明らかにした。
月面に着陸した民間機は米インテュイティブ・マシンズ社の「ノバC」。愛称はオデッセウス。米航空宇宙局(NASA)の商業月面輸送サービス(CLPS)契約に基づく観測機器や実験装置などのほか、民間から受託した機器などを搭載した。日本時間今月15日に米スペースX社の大型ロケット「ファルコン9」で打ち上げられ、23日午前、月の南極付近に着陸した。
月面軟着陸は旧ソ連、米国、中国、インドに続き、先月20日に日本が達成済みだが、いずれも政府機関によるもの。民間の挑戦としては、2007~18年にコンテストが開かれたが勝者なしで終了。19年にイスラエルの機体が、昨年4月にはアイスペース社(東京)の機体が、いずれも月面に激突し失敗している。先月8日には米アストロボティック社の機体が、燃料漏れを起こすなどして断念。一連の試みを経て、オデッセウスが初めて実現した。アイスペース社は年内にも再び、着陸機を打ち上げる。
米国の月面軟着陸は1972年のアポロ17号以来となった。インテュイティブ・マシンズ社のスティーブ・アルテマスCEO(最高経営責任者)は「人類最大の課題に果敢に立ち向かうべく、遠くへ冒険するプログラムを作り上げた。並外れたことを追究するには、大胆さと忍耐力が必要だ」とコメントした。NASAのビル・ネルソン長官は「半世紀以上を経て、米国は月に戻った。この偉業はCLPSにおける、米国のリーダーシップと民間との結束を示した。飛行士を再び月に送り、さらに火星へと向かう航海の扉を開くことにもつながる」とたたえた。