自殺装い踏切で同僚殺害か、直接的行為がないのに異例の殺人容疑を適用…男性の「精神状態」が焦点に
元同僚男性を踏切内に立ち入らせ、自殺に見せかけ殺害したとして、警視庁は9日、東京都小平市の塗装会社社長、佐々木学容疑者(39)(同市栄町)ら男4人を殺人と監禁容疑で逮捕したと発表した。4人が事件の約3年前から日常的に暴行していたとみている。
被害者の死亡に至る直接的行為がない事件に殺人容疑を適用するのは異例。男性が指示を拒否できない状態に追い込まれていたかどうかが捜査の焦点となる。
ほかに逮捕されたのは、いずれも同社社員の島畑明仁(34)(板橋区大門)、野崎俊太(39)(東大和市狭山)、岩出篤哉(30)(小平市仲町)の3容疑者。
発表によると、4人は共謀して昨年12月2日午後11時40分頃~3日午前0時10分頃、元同社社員の高野修さん(当時56歳)(板橋区西台)を自宅近くから車に乗せて監禁。板橋区徳丸の東武東上線踏切で電車にはねられるよう仕向けて殺害した疑い。逮捕は今月8日。
高野さんの死因は多発性外傷だった。目撃情報から踏切内に1人で立ち入ったとみられる。4人は逮捕前の任意の調べに「自分で電車に飛び込んだ」などと関与を否定したという。
捜査関係者によると、防犯カメラ映像などから、4人は事件の約2時間前に高野さん宅を訪問。島畑、野崎両容疑者が車で連れ出し、北西に約3キロ離れた「笹目橋」を経由し、踏切に連れて行ったとみられる。
高野さんは2015年2月~23年10月、一時退職した時期を含めて同社に勤務。給料が十分支払われない時期もあった。4人の一部のスマートフォンには高野さんにプロレス技をかけたり、熱湯をかけたりする動画や画像が複数残されていた。
警視庁は、4人が仕事上のミスなどを理由に高野さんへの暴行を始め、エスカレートさせたとみている。
甲南大の園田寿名誉教授(刑法)によると、被害者の自由を奪って自殺に追い込んだ場合は「自殺教唆罪」ではなく、殺人罪が適用されることがある。適用には、日常的な暴行や脅迫、監視などを通じ、被害者が「死を選ぶ以外に逃れられない状態」だったと立証する必要があるという。