代表メンバーから“ハリルイズム”を読み解く
「リアルに徹した選出と、そうではない選出が混在していると言っていい。つまり、いま現在の調子のよさで選ばれた選手と、過去の実績を踏まえて選出された選手、そして将来を見据えて加えられた選手となる。呼ばれた人数が多かったがゆえに、遠藤が外されたことが驚きをもって受け止められたと思う。しかしながら、遠藤に力のあることはハリルホジッチ監督もわかっているはずで、故障で長く実戦から遠ざかっていた山口(蛍=セレッソ大阪)や、ワールドカップ以降、代表に招集されていなかった青山(敏弘=サンフレッチェ広島)を見たいということなのだろう。同じことは、新監督が目の前で視察した大久保(嘉人=川崎フロンターレ)にも言えるはずだ。バックアップの選手をこういう形で発表することは非常に珍しいが、それだけ数多くの選手に代表への門戸が開かれている証でもある。これからも大きな集団のなかで、選手たちを切磋琢磨させていくのだと思う」 ハリルホジッチ新監督は、日本サッカー協会の理事会で承認された翌13日に早くも来日。翌14日にJ1のFC東京対横浜F・マリノス、18日にはナビスコカップ予選リーグの川崎フロンターレ対名古屋グランパスを視察した。自らの目で見た4チームから、バックアップメンバーを含めて10人をチョイスした。 ファインセーブを連発したFC東京のGK権田修一、Jリーグ屈指の韋駄天ぶりをアピールした永井謙佑を招集し、バックアップのなかには左サイドバックとして成長著しい22歳の車屋紳太郎、センターバックとボランチをこなせる大卒2年目の谷口彰悟のフロンターレ勢が名前を連ねている点も、現実主義者の側面を物語っている。 2010年4月のセルビア代表戦以来となる代表復帰を果たした永井に関して、ハリルホジッチ監督はこう語っている。 「スピードに関しては素晴らしいものがあった。(相手の最終ラインの)背後のシチュエーションが出てくれば、得点する可能性も増える。まだまだ改善する余地はあるが、現代フットボールに一番必要なクオリティーを持っている点で興味深い選手だ。いろいろと話をしてみたい」 FW陣にはかねてからA代表でのプレーを熱望し、ファンやサポーターからも待望論が根強かった宇佐美貴史(ガンバ大阪)も名前を連ねた。招集そのものは2012年11月のオマーン代表とのワールドカップ・アジア最終予選以来となるが、キャップはまだ獲得していない。 実績十分の本田圭佑(ACミラン)や岡崎慎司(マインツ)、アギーレ体制下でブレークした武藤嘉紀(FC東京)たちを軸に、永井と宇佐美も加わったことで総勢9人となったFW陣を水沼氏はこう見ている。 「武器である決定力が今年に入って影を潜めている感があるものの、宇佐美は昨シーズンの夏場過ぎから、いつA代表に選ばれても不思議ではないパフォーマンスを続けていた。永井に関して言えることは、どんなに調子が悪くてもスピードは衰えないということ。加えて、昨シーズンの中盤あたりからコンスタントに試合に出てきたなかで、運動量の多さやクロスの質など、点を取ること以外の部分で成長している。ハリルホジッチ監督がどのようなサッカーをするのかはメンバーを見る限りではわからないが、飛び抜けた能力や武器を持った選手は代表に選ばれて当然であり、まずは手元に置くことでパーソナリティーや集団のなかでの存在感を見たいということなのだと思う」 招集された31人のポジション別の内訳は、GKが4人、DFが11人、MFが7人、そしてFWが9人となっている。このうち長友佑都(インテル)と内田篤人(シャルケ)の両DF、ボランチの今野泰幸(ガンバ)はけがで試合に出場できないことを承知の上で、自らの哲学を伝えたいとあえて招集した。