代表メンバーから“ハリルイズム”を読み解く
故障者を差し引いたポジション別の内訳を見る限りでは、フォーメーションは「4‐2‐3‐1」か「4‐3‐3」となることが濃厚だ。いずれもしても左右の両サイドに異なる武器を持った選手を配置し、永井なら100mを10秒8で走破するスピード、宇佐美ならばゴールに直結するダイナミックなドリブルなど、「個」を前面に押し出した縦に速い攻撃を仕掛けていく展開が予想される。 もっとも、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身でフランス国籍を持つ62歳の指揮官は「毎試合、勝つための準備をする」と触れただけで、フォーメーションを明言しなかった。 アルジェリア代表を同国史上初のベスト4へ導いた昨夏のワールドカップ・ブラジル大会では、ドイツ代表に惜敗した決勝トーナメント1回戦を含めた全4試合で異なるフォーメーションを組んだ。日本代表監督として初めて臨む2試合でも徹底して対戦相手を研究したうえで、変幻自在な采配をふるうつもりだ。 4月に行われる組み合わせ抽選会を経て、6月からは息つく間もなくワールドカップ・ロシア大会出場への第一関門となるアジア2次予選が始まる。準備期間が極めて限られているなかで注目されるハリルホジッチ新監督の手腕を、水沼氏はこう見ている。 「監督が変わったからといって、代表メンバーがいきなり半分以上も入れ替わることは、日本サッカー界の場合はほとんどあり得ない。まず求められるのは、新監督のやり方を日本サッカー協会が全面的にバックアップすること。見る側もアルジェリア代表監督時代の戦い方を含めた、新監督のこれまでの歩みを学んでいるところだと思う。引き出しの多い監督ということはわかっているけど、そのなかでも対戦相手に合わせてリアリティーに徹するのか、日本が主導権を握るサッカーを追求するのかを、決して過度の期待をかけることなく見ていきたい」 選手たちは23日正午までに大分市内に集合。ウズベキスタン代表戦後に解散するまでの9日間という時間のなかで、ハリルホジッチ新監督が唱えるイズムをピッチ内外で共有していく。その間、東京・文京区のJFAハウス内には「毎日ここで仕事がしたい」と熱望する指揮官のリクエストを受けて、歴代の日本代表監督では初めてとなる専用の「監督部屋」を設置する工事が進められる予定だ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)