ハチ(米津玄師)さんと2010年の即売会で話した大切な思い出。「ヲタクはいじっていい」時代があった
「壊れていても構いません」
2024年も米津玄師の歌声をよく耳にした一年だったと思う。連続ドラマ『虎に翼』の主題歌「さよーならまたいつか!」、映画『ラストマイル』の「がらくた」、Netflixシリーズ『さよならのつづき』の「Azalea」。そして何より、6th Album『LOST CORNER』が発売されたことも大きい。 ただ、2018年 紅白歌合戦「Lemon」の時も、今年の紅白スペシャルステージで「さよーならまたいつか!」を歌う姿を見た時も、同じことを思わずにはいられなかった。「本当にあの人なんだろうか……?」と。2010年の真冬、蒲田駅近くのあの即売会で、誰よりも目立っていたあの人に── 。 それでも、彼は間違いなくハチの途上にいるのだろう。「ドーナツホール」の新MVには、「壊れていても構いません」という言葉が概要欄にもMVの中にも出てくる。この言葉から「がらくた」を連想したファンは多いだろう。同曲のサビはこんな言葉で歌い上げられる。 「例えばあなたがずっと壊れていても 二度と戻りはしなくても 構わないから 僕のそばで生きていてよ」 どんなにボロボロになっても、寄り添ってくれる音楽──。ハチから続く表現の根っこをそこに見たような気がして、また勝手に嬉しくなったのだった。
野田 翔