北海道と東京の二拠点生活で実感…田舎暮らしの心地よさを最も決定づけるものとは
長きにわたる東京での編集生活を経て、約2年前に北海道にある東川町との二拠点生活をスタートした下田結花が、都会とローカル両方の暮らしを過ごすなかで感じたこととは?この地の魅力をお伝えします。 【写真集】「住みたい場所に住む」という自由。二拠点生活のなかで感じること
【Profile】 下田結花/Yuka Shimoda 旧婦人画報社(現ハースト婦人画報社)入社後、書籍編集部、『ヴァンテーヌ』編集部を経て、2003~16年までラグジュアリー住宅誌『モダンリビング』編集長。2016年4月よりパブリッシャー(発行人)に就任。自身も「暮らしは日常のプロジェクト」と日々を楽しみ、SNS・セミナー・講演などを通してその考え方を発信。著書に『心地よく暮らす インテリアの小さなアイデア109』(講談社)。 Instagram: @yuka_shimoda
土地探しよりも、家よりも、運転免許の取得が先
私が北海道・東川町での二拠点生活を本格的に考え始めたのは、2017年のこと。これから先の20年をどうするかを家人と話し合うなかで、東京だけで生活していくことに限界を感じ、もっと新しい経験、新しい暮らし方をしたいと思ったのがきっかけ。 東川町は、2014年にモダンリビングで取材に来てから、家人と2人で何度も休暇を過ごしに来ていました。四季折々来るたびにその自然の美しさに癒され、次第に町の人とのつながりもできていって、ごく自然な形でこの町に住みたいと思うように。 二拠点生活を真剣に考え始めて、まずしたことは運転免許を取ることです。人口8600人の東川町は、鉄道の最寄りの駅もなく、地下鉄もなく、公共交通機関はバス。そのバスも、家の前を通るのは1日に4本だけ。このようなローカルな場所で暮らしていくためには車の運転は不可欠です。 2018年に免許を取り、それから土地探しを始めました。幸い、翌年2019年に農家宅地だった土地を取得。そこから一気に具体的に話が進みました。
心地よさは家で決まる
二拠点生活にもさまざまな形があると思います。賃貸物件ならぐっとハードルが低くなります。しかし、私の場合は最初から家を建てることが前提でした。そもそも、東川町では、アパートなどの賃貸物件が少なく、単身者でも旭川から通っている方がたくさんいます。 古い一軒家をリノベーションするという手もありますが、冬は- 20℃以上になる寒冷地。築30年を超える物件のリノベーションは、機能性から考えてもあまり得策ではありません。 そしてわざわざ二拠点生活をするのならば、東京とは違った暮らし方をしたい。東京の家は、利便性や時間的合理性を考えてマンションにならざるをえませんでした。広さにも当然制約があります。 街の機能が整った都市の暮らしはそれでも良いのですが、ローカルでの暮らしは、家で過ごす時間が長くなります。そう考えると、心地よさは家で決まると言っても過言ではありません。 東京に比べて地価が安く、広い土地を手に入れやすいのもローカルの魅力。農家宅地だったここは周りを田んぼに囲まれた350坪。庭には果樹もたくさんあります。カーテンをしなくてもすむ、周りに家のないこの開放感と広さは都市では叶えられません。 この家は、延べ床面積は140㎡ほどの平屋ですが、大きな窓から抜ける景色のせいか、実際よりも広く感じられます。飲食店の数も限られる東川では、自宅に集まる機会も多くなります。10人座れる大きなテーブルや、ワークショップやパーティもできる余裕のあるスペースは、東京では得られなかったものです。