日米同盟の役割やその対価も? 「安倍・トランプ」首脳会談の焦点は
●安保の適用範囲
安全保障の関係では、わずか数日前にマティス国防長官が訪日し、稲田防衛相のみならず安倍首相にも会いました。軍歴44年を誇り、米中央軍司令官も務めた同長官は在日米軍の性格を正しく認識しています。さらに日本を、やはり米軍が駐留しているドイツや韓国と比較し、「日本はモデルだ」とさえ称賛しました。オバマ政権時代にさえ聞かれなかった日本の財政負担についての賛辞はトランプ氏の発言とあまりに違っており、日本側では一種の戸惑いを覚えた人もいたようです。ともかく、マティス国防長官は国際情勢を正しく認識しているプロフェッショナルであることを証明してみせたと思います。 また、日米安保条約が日本の統治している領域に適用されること、つまり、かりに第三国から攻撃された場合米国は防衛義務を負っていることを再確認しました。メディアではことさらに尖閣ばかりが焦点になっていましたが、尖閣諸島が特別なのではありません。日本が統治している全領域に安保条約が適用されるのです。 安倍首相とトランプ大統領の会談でこれらの問題があらためて話し合われるか、詳細は不明です。マティス長官の訪日により現時点で必要な意思疎通はすでにできているので、他の問題に時間が割かれるかもしれません。
●日本への対価
一方、安全保障面では今後、日米の協力が東アジア地域においてどのような役割を果たすことになるか、これまで以上に問題になるでしょう。この地域では核・ミサイルの脅威にどのように対応するかという問題があり、日米韓の協力を強化しなければなりません。 また、中国の南シナ海・東シナ海での膨張的行動によりフィリピンなどの安全が脅かされる危険が将来的にはあります。そのような場合には、我が国の安保関連法の改正で認められた「重要影響事態」や「存立危機事態」に該当する事態が発生し、フィリピンへ自衛隊が出動することが必要となることが考えられます。 安倍首相がトランプ大統領と異例の親密な関係を構築することは積極的な意味があると冒頭で述べましたが、米国は慈善事業で日本との関係を改善しているのでないことはもちろんであり、米国の側においても日本に対する期待が高まり、対価を求めるようになることは当然あるでしょう。トランプ大統領は対価を非常に重視する傾向があると思います。
----------------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹