阪神の新ストッパー候補ケラーにスアレスの代役が務まるのか…データから浮かび上がる不安と可能性
フォーシームの軌道データを調べると、横の変化量は18.3センチで昨年の大リーグ平均(2020)とほぼ同じだが、縦の変化量は44.2センチで平均より3.66センチ大きい。よって相手打者には少し伸びていると映るはずで、それを高めに狙って制球できるなら、球速もあるのでもっと空振りを奪えるはずだが、そういう制球力を欠く。 一方のカーブは、落下幅において2種類を投げ分け、横というよりは縦の変化だが、ジョンソンを上回る空振り率が示すように決して悪くない。ただ、低めに決まっている限りは三振を狙う際の決め球にもなりうるが、複数の映像を確認してみると、キャッチャーが低めに構えているのに、浮くことが決して少なくない。ここでもやはり、制球力に不安を感じる。 結局、それぞれの球質は悪くないが、狙ったところに投げられるような制球力を持った投手ではないため、長所を生かしきれていないのではないか。 逆に捉えれば、日本でそうした課題を克服できるなら、大化けする可能性も否定できない。だが、改善ができなければ、メジャー時代同様、被本塁打が増え、僅差の勝ちゲームで最後の9回に登板させるには、リスクを伴う。 ただ、球種を増やして制球力をカバーする手はありそう。昨年はわずかながらチェンジアップを投げていたようだが、例えば、真っすぐに軌道が近く、球種の判別がしにくいカットボールを持ち球に加えれば、真っすぐと偽装させて、相乗効果が期待できる。カットボールか? と相手が考えたところに真っすぐが来れば、縦の変化量は決して小さくないので、多少甘くても空振りを取れるのではないか。逆のパターンならゴロになる確率が高くなる。制球に苦労するなら、カット、スプリットなど、フォーシームとの軌道が判別しにくい球種を加えることを考えるべきだろう。 もっとも最終的な評価は投資額次第。年俸が5000~7000万円程度なら、伸びしろを考えた場合、悪くはない。ただ、日本のスポーツメディアの報道によると、1年110万ドル(約1億2500万円)となっているのでリスクのほうが大きく映る。本来ならば、かつての藤川球児氏のような日本人のクローザーを早く育てたいところ。助っ人に頼る限り、数年に一度のサイクルでチームの命運を左右するようなポジションを未知の戦力に委ねることになる。それこそ、対応すべきリスクと言えるかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)