【毎日書評】ドン・キホーテという異色を大ヒットPB「情熱価格」のリブランディングから紐解く
スピード感と実行力
ドン・キホーテを担当した宮永氏がいちばん驚いたのは、物事が決まるスピード感と実行力だったそうです。ドンキでは各事業責任者が大きな決定権を持ち、やると決めたらやり切るというのです。 そのベースにはドンキならではの人材力があると思います。ご一緒した森谷役員は、まさに「好き勝手」にやっている感じでして、端で見ていても吉田社長が「もうそこまで進んでるの?」と驚かれている場面も多々ありました。それで売上高2兆円を超えてしまうのですから、ドンキの人たちのすごさがわかっていただけると思います。(298ページより) 幹部にそうした文化が根づいているため、社員の人たちも「好きなことを/自分がやりたいように」動き回っているようです。そして、そうすることで成果を上げるのが当たり前という理想的な雰囲気になっているというのです。 空気を読んで中庸を求める集団ではなく、「目標に向けて、一人ひとりが自律しており、戦う集団」になっているすごみを感じました。(298~299ページより) ドンキは外部企業の手を借りることなく、ほとんど自前でやってきて大きく成長した企業ですが、それは相当の“戦闘力”を各社員が持っていたからこそ実現できたことなのでしょう。(298ページより)
なんでも「イエス」と答える人は不要
博報堂の営業担当者に、ドンキのプライベートブランドである「情熱価格」のリブランディングを打診した際、森谷役員は「僕らがいったことになんでも『イエス』と答えるような人は、絶対に連れてこないでください」と話したのだそうです。 そのため宮永氏は「ブランディング」を進めるなかで、“本当に必要となること”を好き勝手に議論したのだといいます。 その議論の中で、「ブランディング」とは、目に見える部分だけを整えることだけをやっていてはダメで、商品開発の会議体をどうするのか、お客さまの声を商品リニューアルにどう生かしていくのか、といったところまで含め、ブランドが持続し、成長するためのエコシステムを創ることこそ、「ブランディング」における「要」だという結論に行き着き、今の「情熱価格」が存在していると思います。(300ページより) 「情熱価格」のプロジェクトでは、ブランディングを突き詰めることができていると宮永氏は感じているそう。しかも“よそ者”の自分でさえ、普通ではできないことに携われているだけに、ドンキの仕事は“めちゃくちゃ楽しい”のだともいいます。 とはいえ博報堂の人間が好き勝手に発言しているのですから、最初は社員サイドから反発も起こって“ほとんどケンカ”状態になったようです。しかしその一方には、「まあ、1回やってみようじゃないか」と、宮永氏たちの考えや手法を受け入れてくれた社員も多かったのだといいます。つまりはそうした度量の大きさこそが、ドンキのポテンシャルなのかもしれません。(299ページより)