東京五輪に向けた「民泊」なぜ大田区で条例化?
東京五輪開催に向け、東京都大田区は個人宅の空き部屋などを宿泊施設として貸す「民泊」を認める条例を制定する方針を明らかにした。年内の条例成立を目指しており、成立すれば首都圏で初めて「民泊」が認められることになる。すでに無許可での民泊ビジネスが増加する中、なぜ大田区は「民泊」の条例化へ踏み切るのか。
なぜ大田区で先行導入?
「民泊」とは、個人が家の一室などを旅行者に貸し、宿泊場所を提供すること。海外では、インターネット上で宿泊希望者と部屋の提供者をつなげるサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」が拡大し、旅行者にとって「民泊」が宿泊先の選択肢の一つになりつつある。日本でもすでにこのサービスを利用した「民泊」が民間で行なわれているが、日本の旅館業法では有料での宿泊施設の提供はホテルや旅館などに限定されており、「民泊」は現行の法律に抵触する。 そこで政府は昨年4月、指定した「国家戦略特区」で旅館業法の規制を緩和する政令を施行。特区に限り、ホテルや旅館に課される厳しい安全・衛生基準の規制を部分的に緩め、家の一室を貸し出せる「民泊」を可能にした。「特区」の対象は「東京圏」(東京都、神奈川県、千葉県成田市)と「関西圏」(大阪府、兵庫県、京都府)で、詳細な規定については自治体ごとに条例を制定する必要があるが、これまでに条例が成立した自治体はない。 大田区は年内の条例制定を目指しており、成立すれば首都圏で初めて「民泊」が認められることになる。大田区政策課は条例化の理由について、「大田区は羽田空港のお膝元で、『国際都市おおた』を掲げている。東京五輪に向け、外国人を受け入れて街に賑わいをもたらすためには、この特例を生かしていくべきだと考えた」と説明する。 大田区が導入に踏み切る背景には、同区への訪日外国人数の急増がある。同区政策課によると、大田区を訪れる外国人数は年々増加傾向にあり、昨年は前年比で16%も増えた。一方、昨年の大田区のホテル稼働率は91%と、ほぼ満杯状態。東京五輪に向け外国人観光客の増加が予想される中で、宿泊施設不足が大きな課題となっていた。「今後、訪日外国人数はもっと増えていく。民泊が今後可能性のある事業だと考え、区が特例をしっかり設けることで、安全・衛生面に配慮した民泊ができるようになると考えた」(同区政策課)。