東京五輪に向けた「民泊」なぜ大田区で条例化?
大田区は「空港から近く、都心や横浜、鎌倉などの観光地へ行く交通アクセスも便利。リーズナブルで魅力的な飲食店も多く、民泊で外国人の方が多く来ていただくことになれば、まちの活性化につながるのではないか」として、経済効果の大きさにも期待する。
誰でも「民泊」ができるわけではない
条例が制定されれば大田区では「民泊」が認められるようになるとはいえ、大田区の空き部屋がある家であれば誰でも無条件に外国人に貸し出せるというわけではない。昨年4月施行の政令「国家戦略特別区域法施行令」では、「民泊」が認められるためには、7~10日以上の滞在に限ること、台所や浴室、トイレがあること、鍵がかけられることなど、一定の条件が課されている(表参照)。 大田区によると、「民泊」の施設を提供するには区への届け出が必要で、これらの条件などを満たしているかについて、区の審査を受ける必要がある。区によると、このほかに運用の際には滞在者の名簿やパスポート番号を控えること、事前に近隣住民に説明をすること、苦情窓口を設けることなどが必要になる。
五輪へ向け広がる「民泊」、課題は
国から課される厳しい安全・衛生基準が一部緩和されることで、一般人でも自宅への宿泊を受け入れることができる「民泊」。旅行者にとっては双方の合意次第で格安で宿泊できるメリットがあり、行政側にとっては五輪に向けてホテルなどを新たに建設せずとも宿泊客数を増やせることが魅力的とされる。大田区による条例化は、日本における「民泊」の推進力になるだろうか。 全国のホテルや旅館が加盟する「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会」は大田区で認められる民泊について「客室の構造基準や安全基準が一定程度定められ、7~10日以上滞在する外国人に限られている」として容認する立場だ。一方で、さらなる規制緩和や無許可の「民泊」には反対する。「ホテルや旅館では、テロ対策のためにパスポートの写しを取ることや、新型インフルエンザへの対策など、衛生・安全面の対策が厳しく国から指導されて遵守されている。お客様の安心・安全を考えると、こうした対策を取らない『民泊』には賛同できない」と話す。