フェラーリ、ステルス機のように静かに忍び寄り、今季タイトルを奪取するのか? 自信を見せるバスール代表
2024年のF1は開幕当初、レッドブル圧勝かと思われた。しかし徐々にマクラーレンが接近し、一騎打ちとなった。しかし、物事はそう単純ではない。この一騎打ちに、ひっそりと近づき、そして一気に三つ巴の戦いに持ち込んだチームがある。フェラーリである。フェラーリはこの勢いそのままに、久々のコンストラクターズチャンピオンを獲得できるのだろうか? 【動画】アイルトン・セナの”愛機”マクラーレン・ホンダMP4/5Bがインテルラゴスを駆ける。ドライバーはハミルトン 2024年のフェラーリは、前年の弱点だったロングランのパフォーマンスを改善し、安定した予選アタックラップという強みと組み合わせ、はるかに高い競争力を発揮した。その結果、シーズン前半にはオーストラリアとモナコで勝利を手にすることになった。しかしシーズン途中でマクラーレンが躍進した一方、スペインGPでフェラーリが投入したフロアのアップデートが大失敗だったことで、大きく後退することになった。これでジ・エンドかと思われた。 それから3ヵ月が経った。フェラーリはここ数戦で圧倒的な伸びを見せ、コンストラクターズランキングでレッドブルを追い越し、首位マクラーレンとの差も縮めた。大逆転でのチャンピオン獲得も、十分に可能と思われる状況だ。
モンツァでのアップデートが、今の勢いの基礎に
フェラーリがこの位置まで立ち直ったのは、今季の開催カレンダーによる部分も大きいかもしれない。前述のとおりスペインGPでアップデート版のフロアを投入したことで、ひどいバウンシングに悩まされることになった。 イタリアGPでこの対策パーツを投入。そしてそのグランプリを、チーム内の争いに集中したマクラーレンの隙をついて勝利した。 対策を行なったとはいえ、まだ最終調整が完了していたわけではなかったはずだ。しかしその後はアゼルバイジャン、シンガポールと市街地コースを舞台としたグランプリ続いた。これらのサーキットは、フロアのパフォーマンスが重要視されにくいコースであると言える。つまり、フェラーリの弱点を隠した可能性がある。 この2戦、アゼルバイジャンではシャルル・ルクレールがマクラーレンのオスカー・ピアストリと優勝争いを繰り広げた結果2位。シンガポールでは表彰台を逃したが、パフォーマンスが上がってきていることを実感していたようだ。 「シンガポールのグランプリを終えた後、ペースはあったと感じていたので、少しイライラしたんだ」 フレデリック・バスール代表は、当時そう語っていた。 その後、アメリカGPがやってきた。このアメリカGPは、イタリアGPに投入されたパッケージの、真の意味での試練のグランプリとなった。スプリントレースでは勝利を手にできなかったが、決勝ではレッドブルのマックス・フェルスタッペンとマクラーレンのランド・ノリスがバトルを繰り広げる中、ルクレールがスタート直後に首位に浮上。カルロス・サインツJr.も力強いペースとタイヤマネジメントでライバルを凌駕して2番手にポジションを上げ、1-2フィニッシュを達成した。 フェラーリでシニア・パフォーマンスエンジニアを務めるジョック・クレアはこの成績について、セットアップに磨きをかけたことが活きたと語った。 「セットアップの面でやったことはいくつかあった。興味深いことに、オースティンとよく似たサーキットであるオーストリアでは、セットアップを間違えたんだと思う」 「夏休み以降、開発とセットアップの両面で、どの方向に進べきかを把握できている」 そして先日のメキシコシティGPでも、サインツJr.がポール・トゥ・ウインを達成。ルクレールも3位に入り、フェラーリはコンストラクターズランキングでレッドブルを抜き2番手にのし上がった。 バスール代表も、クレアと同じように、投入したアップデートに関する最適なセットアップを見つけることに時間がかかったと語る。 「アップデートを行なうと、マシンのセットアップに慣れるのに1~2週間かかることがある。それが、我々が置かれた状況だった。最初はコースとの問題だと思っていたが、その後でバクーとシンガポールというふたつのストリートサーキットを走った。そしてオースティンで初めて、一般的なサーキットに戻ってきた。しかしモンツァ以降、我々はずっといい状況になったというのも事実だ」