日本にふたつとないサーファーディスコ専科のバー『ロジャー』。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「か」は蒲田に続き学芸大学へ。
世は空前のディスコブーム、というのはもう半世紀くらい前の話だけど、休日に『サタデー・ナイト・フィーバー』を観なおしてからというもの、本気であの頃のカルチャーに興味が湧き勉強中。場所や時代ごとにいろいろな流行があって、中でも’70年代後半から’80年代前半にかけて流行した「サーファーディスコ」はかなり大きなムーブメントだったみたいだ。 東京五十音散策 学芸大学③
そんな気になる世界を教えてくれたのが学芸大学駅から徒歩5分の場所にあるディスコティックバー『ロジャー』。ここは、一般的なブラックミュージックが聴けるソウルバーと違い、ダンスクラシックスを中心にウエストコーストやAOR、ニューウェイブサウンドなど、いわゆるディスコのイメージに直結しなさそうな音楽も積極的にオンエアしている。
「サーファーディスコは日本独自の文化なんだけどね。東京だと特に六本木がメッカだった。サタデー・ナイト・フィーバーと同じ頃に、サーフィンブームもあったから、サーファーウケする音楽がかかる踊り場ってのが結構流行ったんだよ」とマスター。話しを聞くと、ディスコティックなのにドゥ―ビー・ブラザーズがかかっていたことが腑に落ちた。
学大生まれ学大育ち。生粋の先輩シティボーイであるマスターは、高校1年生のときに六本木の『キッスレディオ』という箱で大学生サーファーたちに揉まれてディスコデビュー。以降、この世界に心を奪われ、TV番組の音響の仕事を20年間続けながらもサーファーディスコを探求。遂に好きが高じて15年前にこの店をオープンした。店内には長年温めていたレコードを2000枚所蔵。アルバム盤は当然、アーティストがDJのためのプロモーション用に作っていた12インチ盤などに加え、当時の東京各地のディスコで生録音されたMIX音源なども蒐集しBGMに用いている。
ブラックカルチャーに、ファラフォーセット・メジャースのポスターや、パンナムのエアラインバッグといったサーフィンブーム期のグッズがクロスオーバーしているのも面白く、カウンターに飾られているかつて人気だったディスコのメンバーズカードやマッチも一見の価値あり。