東大アメフトRBの思考法「正解が見つからなければ正解にしてしまえばいい」 どん底で見つけた、無駄な迷いを消す悟り
4年春にたどり着いたレギュラー、6月に転落
神奈川県有数の進学校、浅野高校の出身。4学年上に、東大で主将を務めた唐松星悦(しんえ、現・オービックシーガルズ)がいて、学生ながら日本代表にも選ばれていた。 「唐松さんのニュースも聞いてましたし、高校にアメフト部もあったので、(アメフトのことは)知っていました。僕は受験勉強の片手間みたいな感じで、柔道部だったんですが。東大に入ったらスポーツに本気で取り組みたいなと思って。安直かもしれませんが、ウォリアーズは環境も整ってますし」 はじめは、仲間がいるから練習に行っていた。自分からヒットができるようになってくると、アメフトが少しずつ面白くなってきた。 しかし話を聞くと、山川は決して順調なキャリアを歩いてきたわけではないという。2年生の頃は大きなけがをして離脱。練習もしんどいし、試合ではなかなか勝てない(前年はリーグ全敗)。このまま部活を続ける意味はあるのか。そう考えるとキツくなって、夏から秋にかけて部活を休部した。 チームに戻ってからも、1学年上に伊佐治蓮という絶対的エースがいたこともあって、試合に出られる機会はほとんどなかった。 「3年生秋の立教戦でスターターで出してもらったんですが、全く通用しなかったんです。相手にビビってるし、自分に自信がない。チームの代表として試合に出れるプレーヤーじゃなかったと思います」 それでも4年になってからは、レギュラー争いをしていた。しかし、6月の立命館大学戦を前にオフェンスコーディネーター(OC)の市川拓実(4年、開成)から電話がかかってきた。 「(レギュラーから)外します――」 「『え、何で?』っていう気持ちと、絶望でした。心臓がギュッと縮まるような感覚でしたね」
「ガムシャラにやるしかない」迷い消え復活
この頃山川は、ダイブプレーのルート取りに迷っていて、失敗を恐れ70点を取りに行くようなプレーが続いていたという。東大でRBコーチを務める櫻井大祐さんが話す。 「僕や、杉本(篤、QBコーチ)さん、OLコーチの前田(鉄兵)さんが、市川に強く進言したんです。市川は学生なので、彼だけだと仲間を落とす判断は難しい。最終的に決めたのは市川ですが、かなり彼の背中を押しました」 OC転向前、かつてRBとしてともにプレーしていた市川は、山川に電話したときのことを「試合よりも緊張した」という。そして今、そのときの判断をこう振り返る。 「山川は去年と見違えるくらい成長したと思います。春の判断が幸いでした」 一番下まで落ちてしまうと、あとはガムシャラにやるしかない。それまでは自分がどうしたら評価されるか、相手に対してうまくやるにはどうしたらいいかなどと、外向きにことを考えていた。それがだんだんと、自分自身がうまくなること、自分に足りない部分に目を向ける方向に変わって行った。思い切りやって、なんなら自分で正解にしてしまえばいい。すると無駄な迷いがなくなり、結果も自然とついてくるようになった。 「夏合宿のユニット練習のとき、自分的には普段通りやったつもりだったんですが、そのときコーチから褒められて。そこで自分が思うように迷わずやれば結果が出るんだなと思って、いいメンタルでやれるようになりました」 そこからはまっすぐ。ラストシーズンを前に、山川はレギュラーの座をつかみとった。