弱視の兆候「テレビを近くで見たがる」「目を細める」「まばたきが多い」…健診を待たず受診を
福岡市立こども病院眼科長の後藤美和子医師に、斜視や視力の異常に関する検査や治療法について聞いた。 【イラスト】子どもの一般的な視力発達のイメージ
当院の眼科に来院する新患の3割強が斜視、2割が近視、遠視、乱視などの屈折異常で、二つ合わせて全体の半数を占める。そのほか、涙を鼻に排出する管の通りが悪くなる鼻涙管閉塞や、まつ毛が内側に生えて眼球に当たるなどする内反症も見られる。
斜視は、まっすぐ前を見ていても片方の目が上下や左右にずれてしまうものだ。症状や程度は個人差が大きい。屈折異常は目に入った光が網膜上で像を結ばなくなることで起こる。
いずれも視力の発達が途中で止まる「弱視」につながる恐れがある。斜視に伴う片方の目の弱視は、軽症であれば、正常な目を隠して斜視の目だけで見るトレーニングで回復することが多い。症状によって、専用の眼鏡で矯正したり、手術で目の向きを調整したりする。屈折異常に伴う弱視の大半は、治療用の眼鏡でピントを合わせることで視力の発達が再開する。
子どもの視力は生後6か月で0・06、1歳で0・2、2歳で0・5、3歳で1・0と急速に発達する。元々見えていないため、発達に異常があっても、本人が「見えにくくなった」と訴えることはまれだ。子どもの50人に1人は弱視と言われるが、見逃されているケースも多いとみられる。
公的な健診では3歳児健診で初めて視力検査を行う。ここで見逃すと、小学校入学直前の就学時健診まで発見が遅れることも多い。視力の発達は9歳までには止まってしまうため、できるだけ早く見つけて治療を始める必要がある。
各家庭でも、テレビを近くで見たがる、ものを見るとき目を細める、まばたきが多いといった兆候があれば、弱視の可能性を疑い、健診を待たずに最寄りの眼科を受診してほしい。(聞き手・大森祐輔)
屈折異常の検査機器、導入進む
3歳児健診での視覚検査で、屈折異常などを見つける専用機器を導入する自治体が増えている。精密検査が必要なケースの見逃しを防ぎ、有効な治療につなげることが期待される。