アークエッジ・スペース開発の衛星2機、国際宇宙ステーションへの輸送が完了
アークエッジ・スペース(東京都江東区)は11月6日、同社が開発に携わった衛星2機の国際宇宙ステーション(ISS)への輸送が完了したことを発表した。ISSに輸送されたのは「AE1b」と「ONGLAISAT」。 AE1bは、花巻市に拠点を構えるSPACE VALUEとSpace BD(東京都中央区)が手掛ける「UP花巻」プロジェクトの一環として、岩手県立花巻北高校の生徒が携われるものとして企画された。4月に完成した衛星は、花巻市を代表する作家である宮澤賢治の作品から「YODAKA」と名付けられた。 アークエッジ・スペースは、2021年度に経済産業省に採択され、2023年度以降は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業である「迅速かつ効率的な多種類複数機生産を実現する6U標準汎用バスとその生産・運用システムの開発・実証」の成果として開発された6Uの衛星汎用バスを活用して、YODAKAの設計、開発、製造、運用を担当している。 同社はYODAKAの製造と運用を通じて、汎用バス開発事業で開発した衛星量産システムの活用、複数衛星の自動運用システムの実運用を始める。 YODAKAの開発では、花巻北高校での宇宙教育の一環として、同校の生徒をアークエッジ・スペースの本社に招き、同社の衛星事業やYODAKAの内容を説明。生徒はYODAKAに組み込まれる送受信機の組み立て作業にも参加したという。 YODAKAのミッションは、地上から短歌の上の句と下の句を別々に送信して偶然に出会った組み合わせの短歌(連歌)を作成するというもの。上の句(5・7・5)を全国から集めて、下の句(7・7)はプロジェクトに関わっている花巻北高校の生徒が作成する。上の句はウェブから誰でも応募できる。短歌のテーマは「夜空」。応募の締め切り12月25日。 ONGLAISAT(オンライサット)は、アークエッジ・スペースと台湾の宇宙機関である台湾国家宇宙センター(TAiwan Space Agency:TASA)が連携して開発したリモートセンシング衛星。「ONGLAI(旺來)」は台湾での縁起物であるパイナップルを意味している。 ONGLAISATの正式名称は「ONboard Globe-Looking And Imaging Satellite」。TASAが新規に開発した光学装置を搭載して地球を観測する衛星と説明している。 ONGLAISATの開発プロジェクトでは、衛星バスの開発やインテグレーション試験、初期運用は東京大学 大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 中須賀・船瀬・五十里研究室が担当、ミッション機器はTASAが開発した。アークエッジ・スペースは東京大学とも連携し、ミッション部やバス部の開発に関する各種ベンダーとの契約、調整、試験の実施支援などを担当した。 ONGLAISATのサイズは6U。部品に民生品を活用したことで低コスト、短期間で開発できたと説明。効率的で高頻度な災害監視、環境モニタリングなど幅広い分野での利用の拡大やビジネスが期待できるとしている。 輸送された2機は1カ月程度をめどにISSから宇宙空間に放出される予定。1カ月程度の初期運用の後に実運用される。 衛星2機を格納した無人補給機「Cargo Dragon」は、米フロリダ州ケネディ宇宙センターからロケット「Falcon 9」で日本時間11月5日午前11時29分に打ち上げられた。Cargo Dragonは同日午後11時53分頃にISSの「Harmony」モジュールにドッキングした。 米航空宇宙局(NASA)はISSに物資の輸送を委託する「商業補給サービス(Commercial Resupply Services:CRS)」をSpace Exploration Technologies(SpaceX)を含む民間企業と契約している。今回のミッション「NASA 31st Commercial Resupply Service mission」(SpX-31)はミッションを運用するSpaceXにとって31回目(CRSのフェーズ2「CRS-2」では11回目)。 2機はISSの日本実験棟(JEM)「きぼう」にある「小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer:J-SSOD)」から放出される予定。J-SSODは、YODAKAやONGLAISATのようなキューブサット規格(10cm×10cm×10cm)の衛星や50kg級の超小型衛星をきぼうのエアロックから搬出して宇宙に打ち出して軌道に乗せるための仕組み。
UchuBizスタッフ