「大統領の弾劾に賛成か否か」芸能人にも白黒つけさせなければ気が済まない韓国社会の鬼気迫る「敵か味方か」思考
■ CIAに通報 それとは逆に、尹大統領の弾劾に反対する保守支持者の一部は、弾劾を支持するアーティストが宣伝する製品の不買運動を繰り広げたり、「弾劾賛成芸能人リスト」を作り、彼らを米中央情報局(CIA)に通報したりしている。 アメリカはトランプの第1期政権当時、反米性向の入国者を選り分けるために入国者にSNSアカウント提出を義務化するなど入国審査を強化したことがある。そこから、弾劾賛成の立場を明らかにした芸能人たちを「反米主義者」と通報することで彼らのアメリカ入国を禁じるよう誘導しようという戦略だ。 弾劾支持派を反米主義者と規定する論理は、デモを主導する進歩系団体の性格が「反米、親中、親北朝鮮」だという点だ。実際、以前から弾劾ろうそく集会を行っている民主労総などの進歩系団体のデモ現場には、「米軍撤収」「対北朝鮮制裁解除」などと主張する旗や横断幕が掲げられており、弾劾賛成デモに中国人が多数参加したという情況もある。 そのため弾劾反対派らは、デモ隊で発見した反米スローガンとろうそくを包んだ中国産牛乳パックなどを証拠写真として添付し、芸能人はもちろん、デモに参加した一般人までCIAに通報しているのだという。 このような行動に対して韓国メディアでは、「国の恥を晒している」と嘆息しているが、CIA通報運動が始まって以降、SNSでは弾劾支持の書き込みが大幅に減ったというので、効果がまったくないとは言えないようだ。
■ 沈黙さえ許されない雰囲気 反面、弾劾反対の立場を明らかにしたことで解雇された芸能人も登場した。ミュージカル俳優のチャ・ガンソクは戒厳令直後「戒厳歓迎!」とSNSに書き込んだところ、ネットユーザーから激しい非難を受けると同時に、劇団からも解雇通知を受けた。以後、チャ氏は弾劾反対集会に参加し「左派を擁護すれば意識の高い大俳優になり、右派を擁護すれば歴史を知らないバカ野郎になるのか」と反論している。 弾劾賛成が大勢の韓国の芸能界では、沈黙さえも攻撃の対象になっている。韓流俳優のチャウヌ、韓国人が最も愛する歌手のイム・ヨンウンは「弾劾に無関心」というだけで、目下、ネットユーザーはもちろん一部のマスコミからも攻撃を受けている。 チャウヌは国会で大統領弾劾票決が行われている時間帯に自分が載った雑誌画面をSNSにアップしたという理由で集中攻撃された。イム・ヨンウンは弾劾デモに賛成する声明を出してほしいというファンの要求に「私は政治家ではない。なぜ声をあげなければならないのか」と反問したところ、弾劾賛成派から猛批判されている。キム・ガプスなどの左派系文化評論家らはイム・ヨンウンに「韓国人としての資格がない」との極端な非難を浴びせている。 それだけではない。 X(エックス)には「尹大統領を罷免せよ」という映画人の共同声明に名前を載せなかった俳優たちに対する攻撃が始まっている。声明文に名前を載せなかった俳優たちを「極右主義者」などと非難し、彼らが出演した映画に対する「不買運動」を行われなければならないという主張まで出ている。