首都圏で「はにわ展」人気花盛り 「かわいい」が一変の展示も
東京国立博物館で開催中の特別展「はにわ」(8日まで、九州国立博物館で来年1月から開催)が連日、にぎわいを見せている。同展には各地で出土した古代の土製品が「大集結」しているが、歩調を合わせるように首都圏各地で別の「はにわ展」が開かれ、人気の高さを伝える。2会場を訪れた。 【写真】東京国立近代美術館の「ハニワと土偶の近代」展には、イメージを受け継いだ戦後の立体作品が展示されている 市原歴史博物館(千葉県市原市)では特別展「旅するはにわ展」(15日まで)が開かれている。同館所蔵の山倉1号墳出土埴輪(はにわ)が、80キロ離れた生出塚(おいねづか)埴輪窯(埼玉県鴻巣市)で焼かれ運ばれてきたことから、古代の地域間交流をはにわに物語らせているのだ。 同窯跡出土の「振り分け髪の男」(国重要文化財)などは出展されているが、大半が千葉県内で出土したはにわで構成されているのはちょとした驚きだ。 「振分髪表現の人物埴輪」(山倉1号墳)は「振り分け-」と比較して、見た目や製作法の共通点が確認できる。千葉県を中心に出土した下総型(半身像で顔が平ら)、山武型(全身像で顔が立体的)はにわの独自性も伝わる。「ムササビ形埴輪」(成田市下総歴史民俗資料館蔵)は、全国でも一例だけだ。 鷹野光行館長は「はにわは、親しみを持って郷土の歴史を学べる素晴らしい素材」と語る。 東京国立近代美術館(千代田区)の「ハニワと土偶の近代」(22日まで)を見ると、「かわいい」「癒やされる」といった現代のはにわ観が一変する。 同展は近代以降、はにわと土偶に向けられた視線の変遷をたどる。はにわに限れば近代国家・日本を形作るため「万世一系」の象徴となり、画家が日本神話イメージの素材とし、素朴な顔の表現が「日本人の理想」として戦意高揚に使われたことなど、はにわに落ちた時代の影を絵画などから読み解く。 戦後のはにわは、戦前・戦中の歴史を「読み替える」考古資料となり、彫刻家イサム・ノグチらが「原始の美」を見いだし、特撮や漫画のキャラクターとしても浸透してゆく。はにわを見つめる視線がどう変わり、変わることが何を意味するのか、文字資料も含めた展示品が問いかける。現代美術家の藤浩志さん、画家の池田龍雄さん、タイガー立石さんら九州ゆかりの作家の作品も並ぶ。 本展を手がけた同美術館の花井久穂主任研究員は「はにわは、時代の中でどう置かれていたかによって見え方や解釈が変わる。新たな視点ではにわを見つめ直す契機になれば」と語る。 複数の展覧会が同時開催できるほど数や種類が豊富で、さまざまな見方や考え方ができるはにわ。九州国立博物館にやってくる特別展「はにわ」では、その一端に触れられるだろう。 (塩田芳久) ◇九州国立博物館開館20周年記念特別展「はにわ」 1月21日~5月11日。一般1800円(前売り)ほか。ハローダイヤル=050(5542)8600。