飲食店が「子ども食堂」に! 画期的な新しい仕組み
新しいタイプの「子ども食堂」が拡大している。一般社団法人・明日へのチカラが展開している「ドコデモこども食堂」は、2023年2月から運営を開始。子どもたちを支援する地域の団体と飲食店が協力し、見守りが必要な家庭に食事を無料で提供する仕組みだ。そのやり取りを通じ、困難を抱える家庭と地域をつなげようというのが大きな狙い。支援団体と飲食店が連携し、双方にとって負担が少ない形で子ども食堂の体制を築くという構想が画期的だ。 全国にある子ども食堂の数は2022年12月時点で7363ヵ所(NPO法人全国こども食堂支援センター調査)、東京都内だけでも21年8月時点での設置数は683ヵ所(東京都福祉保健局調査)あり、年々増加している。一方で、資金や会場の確保、食品衛生のリスク管理、ボランティアスタッフの負担など運営上の課題も多く、安定的に運営を継続するのが難しい側面がある。 そうした多くの難題をクリアするのが「ドコデモこども食堂」だ。その仕組みは次の通り。 地域で子どもの支援活動を行うNPO団体などからの申請で、明日へのチカラが食事チケットを発行する。その支援団体を通じて、見守りが必要な家庭1世帯につき毎月3000円分のチケットを配布。チケットが利用できるのは支援団体が指定する複数の提携店で、「子ども支援に賛同する店舗」「子どもが安心して利用できる明るい店舗」など、提携に当たっては一定の基準を設けている。 子ども・親が提携店で飲食をしてチケットで支払いをしたら、店舗はチケット代金を明日へのチカラに請求し、費用が支払われる。この費用は明日へのチカラに寄せられた寄付金でまかなわれている。飲食店にとっては一般客と変わらず売上げになるため、ひずみのない持続可能な支援体制を保ちやすい。 飲食店と子ども食堂を結びつけた構想について、明日へのチカラの岩朝しのぶ代表理事は「飲食店は食事を提供する設備が既に揃っている。食品衛生管理も安心。(多くの店舗は)日中はほぼ開いていて、誰でも引け目を感じることなく利用できる。子ども食堂の環境にはうってつけ」と話す。また、「貧困など困難を抱える家庭の多くは、外食の機会が少ない。外食体験の提供というだけでなく、『食べたいものを選べる』『行きたい時に食べに行ける』という“自分で選択する豊かさ”を実感することも子ども達にはとても重要」と、従来の子ども食堂にはない「飲食店×子ども食堂」ならではのメリットを語る。 「ドコデモこども食堂」が目指すのは、ひと時の食の提供にとどまらない。「チケットを利用する親子を店舗や地域の人が継続的に見守る仕組みをつくり上げること。来店を重ねることで、孤立する家庭がその店や周囲にSOSを出せるようになってほしい」(岩朝代表理事)という。 「ドコデモこども食堂」のパートナー団体は現在全国35団体、飲食店は49店舗とまだ小さな規模だが、「飲食店×子ども食堂」が連携する大きな可能性を感じさせる。飲食店のインフラと、そして飲食業に携わる者が持つ「人を喜ばせたい」というホスピタリティがうまく機能すれば、“長期的に持続可能な子ども食堂”の新しいカタチをつくり出せるかもしれない。