旭化成・小堀秀毅会長「誠実さを守りながら、サプライヤーと成長していくことが重要」
日本商工会議所が30日に発表した調査で、中小企業の価格転嫁が依然、浸透していない実態が浮き彫りになった。企業が価格転嫁をどう考え、取り組むべきかのヒントを探るため、価格転嫁の促進に取り組む企業経営者らにインタビューした。第3回は旭化成・小堀秀毅会長。
■中小企業の4社に1社が取引先からの“買いたたき”を経験~価格転嫁が浸透していない実態
日本商工会議所は30日、中小企業の「取引適正化に向けた課題」について、調査結果を公表した。下請け企業が不当に取引価格を値切られる、いわゆる“買いたたき”行為を受けた経験のある企業は約4社に1社。このうちの半数が「交渉を行ったが、コスト上昇分について十分な価格転嫁を受けられなかった」と回答し、価格転嫁がきちんと浸透していない実態が浮き彫りになった。また、政府が定めた価格転嫁の指針などについて、取引担当者の認識が不足しているという声も多く上がった。 価格転嫁と真正面から向き合っている企業として、大手総合化学メーカーの旭化成・小堀秀毅会長に単独インタビューを行った。旭化成の取り組みから、中小企業と取引をする大企業は、価格転嫁についてどのように取り組んでいくのが良いのか、考えたい。
■「サプライヤーと中長期的、安定的に友好な関係作りをすることが大切」
──今年、大企業や中小企業で歴史的な水準の賃上げが実現した。そのためには大企業から中小企業への価格転嫁が重要だ。経営トップとして、これまで価格転嫁にどのような姿勢で臨んできたか。 (旭化成・小堀秀毅会長)長かったデフレの時は、いつも「コストダウン」というのがキーワードでしたけど、今まさに大きな転換期です。インフレに向かう中で「適正な価格転嫁」というのが、これからのキーワードで、この言葉がコストダウンに変わって、世の中に多く使われるということが非常に重要な局面に来ているということを感じています。 当社は、やはり製造業ということで多くのサプライヤーとお付き合いがあり、我々は製造業として自動車、それから生活必需品なども含めた産業に素材を提供していくという、非常に重要な使命を担っています。つまり、安定的に供給するということが重要であるので、やはりサプライヤーと中長期的、安定的に友好な関係作りをすることが大切ということを常々、従業員に伝えています。 歴代の社長が毎年、前年の事業報告で各地区を回るのですが、冒頭に必ず我々のグループの理念、ビジョン、バリューを常に従業員に伝えていて、一つのカルチャー、企業文化として「誠実さ」というものは、極めて重要だということを訴え続けています。その中の重要な一つが、サプライヤーとの安定的で良好な関係作りだということを常に訴えています。