海外の研究で「肩こり」の根本原因が明らかに 「自分で治す方法」を専門家が解説
「水平あご引き」
このように極めて重要な役割を担っている頸長筋を、先ほど説明した通りスマホを見たり、パソコンを使ったりしている時に、私たちはうまく働かせることができていません。それでは、どうすれば頸長筋をアクティベイトできるのでしょうか。そこで私がお勧めしているのが「水平あご引き」です。 例えばスマホを見ている時、私たちの首は頭が下がって前に突出する姿勢になりがちです。いわゆるカメ首や猫背の状態です。この状態では頸長筋はあまり使われていません。代わりに、首の後ろ側にある脊柱起立筋や僧帽筋が、前に突き出た頭を支えるために緊張を強いられます。 この状態が続くと、頸長筋を使わないことが常態化してしまい、「インナーマッスル→アウターマッスル」という協働が失われ、常にアウターマッスルだけで首を動かすようになる悪循環に陥ります。
数日で症状が改善することも
そこで、前に突き出た頭を、あごを引いたままスライドさせるように後退させて、首の真上に頭が乗っかるようにする。すると、弛緩していた頸長筋が伸びてしっかりと頸椎を支えることができ、同時に僧帽筋などの筋肉への負担も減ります。 見えない糸で頭頂部を上から引っ張られているような感じで背骨を伸ばす、もしくは座っている場合であればできるだけ座高を高くすることをイメージし、同時に肩甲骨を背骨のほうに寄せてみてください。ヨガやピラティスでよく言われるエロンゲーション(伸長)です。 この水平あご引きを基本姿勢とします。そこから首を前に2回曲げ、また基本姿勢に戻って今度は後ろに2回反らせる。そして、やはり基本姿勢に戻してから、首を左右に2回曲げ、同じく基本姿勢から左右に2回回す。 1分程度で終わるはずですが、これを1日2~3セット行います。数週間、人によっては数日行っただけで肩こりなどの症状が改善したという事例を私は多く見てきました。
正しい首の動かし方を脳に覚えさせる
この一連の動きは、筋肉を鍛えるというよりも、正しい首の動かし方を脳に覚えさせるという意味合いが強いといえます。基本姿勢を取ることでまずはインナーマッスルである頸長筋を働かせ、そこからアウターマッスルを使って首を大きく動かす。首に負担を掛けない筋肉の動かし方を自分に学習させるわけです。 また、水平あご引きを寝た状態で行い、そこから起き上がることも肩こり解消には大いに効果があります。 枕を外して仰向けに寝た状態だと、床と首の間にすき間ができるはずです。その空間に手を入れてみるなどして、まずはできるだけ空間を狭くしようとしてください。必然的にあごが引けて首が伸び、寝た体勢での水平あご引きの状態が作れます。 そして、あごを上げずに引いたまま頭を持ち上げ、肩甲骨が床から離れたところで5秒間その姿勢をキープし、あごを引いたままゆっくり戻る。これを朝起きた時に3回だけでいいのでやってみてください。一日の始まりから、正しい筋肉の使い方を体に確認させることができ、症状改善の効果が表れるはずです。 さらに、万歳のように腕を上に持ち上げてから、掌を外側に向けてゆっくりと腕を開くようにして下ろしていくだけでも、肩甲骨を動かす菱形筋(りょうけいきん)が働き、猫背の改善につながるとともに、肩関節の可動域が広がるため、いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)の症状も良くなることが期待できます。