海外の研究で「肩こり」の根本原因が明らかに 「自分で治す方法」を専門家が解説
人類の宿命
そもそも、肩こりは人類の宿命ともいえる側面を持っています。 二足歩行を始めた人間は、体重の約8~10%を占める頭を頸椎のみで支えることになりました。体重60キロの人であれば頭の重さは5~6キロで、ボウリングの球の重さと同じくらいになります。これほど重いものを頸椎は「一本柱」として支えているのです。 同時に、二足歩行を始めたため、人間の肩には2本の腕がぶら下がることになりました。1本の腕の重さは頭と同程度で、やはり体重60キロの人なら5~6キロになります。それが2本、肩にぶら下がっている。 こうした構造上、人間の肩や首は常に大きな負荷を受けることになり、二足歩行によるメリットを享受するのと引き換えに、人間は肩や首に痛みが生じやすいという最大の弱点を抱えることになってしまったのです。 「インナーマッスル→アウターマッスル」という順番での協働によってこの弱点を補い、かつ首のしなやかな動きが可能になっているわけですが、頸長筋をうまく働かせられないことで協働が崩れ、方々にこりや痛みが生じてしまう。 つまり、頸長筋を再びアクティベイト(活性化)させない限り、マッサージや注射によって、いま感じている不快感を一時的に解消できたとしても、肩こりの根本的解決にはならないわけです。そして痛みの解消という「その場しのぎ」ばかりを続けることで、逆に症状の慢性化、重症化、難治化を招いてしまうこともあるのです。
首をしなやかに動かす頸長筋
さて突然ですが、ニワトリの胴体部分を持って揺するとどうなるか知っていますか? どれだけ動かしても、頭は空間上の一点にとどまり動きません。あたかも頭が固定されているかのようです。ハトも、首を突き出しては引っ込め、また突き出しては引っ込めという独特の歩き方をしていますが、あの動きも頭の位置を一定にキープするためのものです。人間も、バイクに乗って急カーブを曲がると体は大きく傾くものの、頭は地面と水平を保とうとします。 いずれも、頭がいちいちぐらぐらと揺れてしまったら、空間認識や平衡感覚が保てなくなるので、それを防ぐための機能だと考えられます。こうした絶妙なバランスを保つことを可能にしているのが、首をしなやかに動かす働きをしている頸長筋です。アウターマッスルは首なら首、腕なら腕を力強く、そして速く大きく動かすことには長けています。しかし、頭の位置を保つような細かく、精密な動きはアウターマッスルだけでは無理で、インナーマッスルをしっかりと働かせなければなりません。