「ひとり言」は脳の衰えを防ぐ簡単にできる対策だ 長期記憶と「言葉に出す」ことの深い関係とは
ゲームでは視覚で数字を捉え、ある数を見つけ次第、手と指を動かしてコントローラを操作します。「運動系」が活性化されていることで、これらの動きも他のグループに比べるとスムーズに行ったと考えられます。 また、「90点を取る」という数値目標より、「一番になる」という言葉が有効だったのもうなずけます。90点という数値それ自体は、概念的なものです。そのため脳の中でイメージしにくいのです。 その点、「一番になる」というのは、ずっとイメージがしやすい言葉です。一番になったときに喜んでいる自分の様子、周りの賞賛する光景が連想されます。イメージ化しやすい言葉であるがゆえに、脳を働かせやすくなるわけです。
■ひとり言で記憶を呼び覚ます ひとり言によって、記憶力が増すという実験結果もあります。 ちなみに、記憶には「短期記憶」と「長期記憶」という2つがあります。短期記憶というのは、「思考系」脳番地と「理解系」脳番地が合わさってできた、ワーキングメモリに記憶されたものです。 一方、長期記憶というのはワーキングメモリから「記憶系」脳番地、とくに海馬によって情報が蓄えられたものをいいます。 短期記憶が、数字や意味のない言葉の羅列のようなものが多いのに対して、長期記憶は体験に基づいたエピソード記憶などが中心です。逆に言えば、脳は意味を持たない記号より、意味を持つエピソード記憶を重視しているのです。
■記憶とひとり言の深い関係 実際、私たちが過去を振り返り、現在の人生、あるいは未来に役立つ情報は何かというと、歴史の教科書に書いてあった年号ではなくて、過去に体験したさまざまな体験やエピソードでしょう。 だからこそ、過去の体験を通じたエピソード記憶が、海馬の長期記憶の中枢に収められるわけです。 脳にしてみると、声帯や顔の筋肉を動かして発せられた言葉=ひとり言は、発せられたという事実で、エピソードと同じ意味と重みを持ちます。