「ひとり言」は脳の衰えを防ぐ簡単にできる対策だ 長期記憶と「言葉に出す」ことの深い関係とは
そして2022年、fNIRSの発見から31年目に、脳機能を定量する技術を完成させて、国際特許と論文にまとめ、発表しました。fMRIはもちろん、従来のfNIRSでもできなかった、脳機能を頭皮上から定量的に評価できる技術を確立したのです。 私は、自分のひとり言を信じたおかげで、30年以上も一途に研究を続けることができました。生物学的にはとっくに老化しているはずなのに、私の脳が生み出すひとり言は老いるどころか、年々威力を増しています。ひとり言の威力たるや、恐るべしではないでしょうか。
いずれにしても、右脳のひとり言に対して、左脳で言い返してみてください。 「それって本当かな?」、「どこかに間違いや問題はないだろうか?」、「例外事例はないだろうか?」。自分の頭の中で、右脳と左脳の真剣なセッションが繰り返されるわけです。 この過程に、外側の世界にあふれている雑多な情報はほとんど関係ありません。というか、むしろそれらは邪魔なノイズのようなものです。 ところが得てして、私たちは外から入力しないと、不安になりがちです。ですが、信じるべきは自分の脳なのです。
自分の左右の脳を信じ、内側で激しく対話を繰り返す──。新しいものや真理というものは、そうやってたどり着けると考えます。 ■集中力がアップする言葉 イギリスの研究で、ひとり言で集中力が増すという実験結果があります。このことを、脳のしくみから解説してみましょう。 実験ではある数を見つけるオンラインゲームを4つのグループに分けて、その成績を比較したということです。そのうちもっとも優秀だったのが、ひとり言をつぶやきながらゲームをするグループでした。
しかも「90点を取るぞ」というような具体的な目標を立てるより、「一番になりたい」といったひとり言がもっとも有効だったそうです。 オンラインゲームですから、おそらくコントローラを使いながら対戦するのでしょう。ひとり言をつぶやくことで、まず左脳の「思考系」が刺激され、左脳の前頭葉から「運動系」に指令がいきます。 このとき、ひとり言をつぶやくことで脳がモチベーションを上げ、臨戦態勢に入るということだと考えます。