年収1000万の裏には毎月残業100時間越え?「時間外労働の上限規制」で工事現場に欠かせないセコカンの未来は…【建設業の2024年問題】
懸念される中小企業の倒産
工事一件の請負金額が4000万円以上の建設工事では、施工管理の有資格者の配置が必須となっている。大企業は関連会社などから人材を派遣することで対処できるが、中小企業にとっては容易なことではない。 このように、時間外労働の上限規制が建設業界に与えるインパクトは大きい。 「いっぽうで、時間外労働の規制に対応しながら業務の効率化を進めた企業に人が集まるため、業界全体で徐々に業務環境が改善していくと考えられます」 髙木氏が指摘するように、業界全体では効率化により状況を改善する取り組みが進んでいる。最近では、建築機械の遠隔操作によって現場間の移動を排除する試みや、事務作業のアウトソーシングなどの対策を推進する企業が増えているのだ。 過酷な残業が常態化していた施工管理だが、今後はワークライフバランスが充実した働き方を実現する動きが強まりそうだ。 AIの出現により、ホワイトカラーのデスクワークがAIに取って代わられると囁かれる昨今では、建築業の価値が相対的に見直されている。今年1月の能登半島地震の際に報道された、緊急復旧のために不眠不休で働く姿からは、建築業、並びに施工管理という職業が果たす社会的意義の高さも感じられた。 2024年に施行される時間外労働の上限規制によって、施工管理の仕事がどのように変革していくか、今後も注視していきたい。 文・取材/福永太郎 取材協力/髙木健次 クラフトバンク総研(企業内研究所)所長 /認定事業再生士(CTP) 写真/shutterstock