年収1000万の裏には毎月残業100時間越え?「時間外労働の上限規制」で工事現場に欠かせないセコカンの未来は…【建設業の2024年問題】
人材不足から若手が登板 極度のプレッシャーで「うつ」も
日本のあらゆる業界と同じく、建設業界でも労働者の高齢化と若手の人手不足が深刻な問題となっている。これらの影響で、経験の浅い若手の施行管理が責任者の役割を担うことも増えているという。 「近年、ベテランが引退したのちに責任者になった若手の施行管理がプレッシャーでうつ病になるケースが問題視されています。現場で職人さんに詰められて、一方では工期やコストに追われる。組織の中間管理職のような仕事を、まだ経験の少ない20代の若手が担当することで、心を病んでしまうのです。若手の育成もうまくいかないですし、悪循環になってしまっています」 ちなみに建築現場のイメージとして、「職人さんに厳しく叱られる」といったイメージもあるが、令和のいま、昭和な感覚はまだ残っているのだろうか? 「荒っぽい人が多いというのは事実ですが、誤解してほしくないのは、現場で職人が怒鳴るのは、命がかかわっているからです。落ちた物が人に当たれば、致命的な事故につながる可能性がありますし、ヘルメットを着用せずに現場に入った人に対しては、安全のために厳しく指導するのは当然。 また、建築現場は騒音が多いため、声がかき消されないように大声を出すことは必要なことです」
有資格者は年収1000万円も可能で、 転職市場でも引く手数多だが…
これまでみてきたとおり業務面では過酷なものの、その分給料は高い。平均年収でも約445万円と日本全体の平均年収(414万円 ※2023年度doda)よりもやや高く、更に大手ゼネコンでは1000万円を超える人もいるという。 「施工管理の年収は、夜間や休日の手当、とくに残業手当が大きく寄与しています。また、一定規模以上の現場には施工管理の資格保有者を配置するという法律(監理技術者)があるため、転職市場では資格保有者が極めて優遇されます。年功序列の意識も薄く、若くても技術があれば稼げますし、年齢が上がっても給与も下がりにくい傾向があります。 資格の難易度は高い分、年収1000万円越えも可能な世界ですよ。ただし…」これまでは時間外労働の手当により高収入を確保できていたが、2024年から実施される残業規制で年収が下がる可能性があるというのだ。 さらに、4月1日以降に懸念されているのが正確な残業時間の申請ができない状況、つまり隠れ残業の横行だ。 だが髙木氏は、「時間外労働の規制によって一時的に隠れ残業を行なう企業が増えるが、徐々に効率化を推進する企業によって淘汰される」と語る。 「時間外労働の上限規制により、建設業界でも厚生労働省の調査には出てこない形で残業を強いる企業が出現する可能性があります。たとえば、会社用ではなく私用のパソコンで作業をさせるといったカタチで。 以前と同じ労働量でも、残業代がもらえないケースも考えられます。ただ、有資格者の施工管理の需要は高いため、そのような企業からはすぐに離れていくでしょう。 また、施工管理が不在となると、有資格者を法令上配置しなくてはいけない工事ができなくなるため、大型の発注を受けられなくなってしまうのです。つまり中小企業では施工管理の退職が倒産に繋がります」