年収1000万の裏には毎月残業100時間越え?「時間外労働の上限規制」で工事現場に欠かせないセコカンの未来は…【建設業の2024年問題】
2023年度の建設投資額は、約70兆3200億円。これだけ大規模な市場をもつ建設業の「2024年問題」が社会に与える影響は見過ごせない。本記事では建設業の中でも花形職種であり、あらゆる工事に欠かせない存在である施工管理(技士)が、4月1日からの働き方改革関連法案での上限規制でどんな影響を受けるのかを考察する。 【写真】危険も伴う現場での作業
残業月100時間超え 施工管理(セコカン)の過酷な実情
施工管理技士(以下、施行管理)は工事全体を管理する、現場監督とも呼ばれる職業だ。建設工事を計画通りに進行するのが主な業務で、現場で働く職人への指示出し、資材の発注、工程のスケジュール管理などをおこなっている。 年収1000万円を超える高収入が実現可能といわれる一方、現在でも月100時間を超える残業が常態化している。土木・建設のコンサルティングを行っているクラフトバンク総研所長の髙木健次氏に、その現状と働き方改革が与える今後の影響を聞いた。 「施工管理はいわば段取りの専門家です。プロジェクト管理で使用する工程表は、駅建設のような大規模プロジェクトでは迷路のように複雑になります。資材の到着遅れや、雨で工事ができないなどの場合、すべての工程を調整するために、その都度関係各所に連絡しなければなりません。 また、現場の職人やクライアントと協力して業務を進めるため、高度なコミュニケーション能力と専門知識が要求されます。いまや建築業就業者の約2.5%が外国人。彼らは語学学校で日本語の勉強はしていますが、図面の内容を理解できない人も多い。それでも適切な指示を出さなければ、図面の読み間違えによって工事がやり直しになってしまいます」(髙木氏 以下同) ちなみに約480万人ともいわれる建設業従事者のうち、施工管理者は約2~3割を占め、人数比で見るとかなりの数だ。 「建設業というと大工など職人のイメージが強いですが、施工管理者たち抜きでは工事が成り立たない確立された職業なのです」 また、ネット上では「とにかく残業がきつい」といった声が多くみられる。働き方改革関連法で上限規制が適用になる前、現時点での労働時間はどれくらいなのだろうか? 「厚生労働省の調査でも建設業の中でもっとも残業時間が長いとされている施工管理は、月に100時間以上の残業も珍しくありません。職人が定時で帰宅した後に、資材の発注・書類作成・スケジュール調整などの作業を行い、その間も携帯電話は絶えず鳴り続けているような状態です」 繁忙期と閑散期の差が大きく、忙しいときには8時から17時までの勤務後そのまま夜勤に入り、翌日の昼まで勤務して帰宅することもあるという。工期を守るために、週休二日を確保することがむずかしい時期もあるそうだ。 また、国や地方自治体が発注者の公共工事では比較的改善が進んでいる一方で、民間の工事では引き続き残業が多いなどの官民格差も指摘されている。