シェルの大幅排出削減を命じた判決、2審で覆る-同様の裁判に影響か
(ブルームバーグ): 石油大手シェルが当初計画よりも速いペースの温暖化ガス排出量削減を命じられた2021年の判決を巡り、オランダの控訴裁判所は12日、一審判決を覆す決定を下した。今後の同様の裁判に影響する、重要な判例となる可能性がある。
今回の判決では、シェルには排出削減の義務があるものの、すでに削減に取り組んでおり、石油・ガス会社に適用すべき削減率を正確に算出する方法はないとした。
この訴えは、オランダの環境保護団体ミリューデフェンシーがシェルを相手取り起こしていた。一審判決はシェルに対して2030年までに19年の水準から45%の排出削減を命じたが、 同社は控訴審で、この判決が義務付けた排出削減目標には法的根拠がなく、50年のネットゼロ実現という目標の達成には非効率的かつ逆効果だと主張した。
ハーグの控訴裁判所はシェルの主張を支持。裁判官は「シェルが守るべき排出削減の割合を決定することは不可能だ。持続可能性を実現することがより困難な業界もある」と判決文で説明した。
原告側は、オランダ最高裁判所に上訴できる。ミリューデフェンシーのドナルド・ポルス理事長は、判決の影響を踏まえ、上告するか新たな訴訟を起こすかを決めると述べた。
シェルは、気候変動対策は裁判所ではなく、政府が講じるべきものだと主張してきた。同社のワエル・サワン最高経営責任者(CEO)は判決後に、「2050年までにエネルギー事業の排出量を正味ゼロにするという目標は、シェルの戦略の中核であり続け、事業を変革させている」とした上で、一つの判決で自動車燃料や暖房用ガス、電力の全体的な需要が減ることはないと主張した。
原題:Shell Overturns Dutch Court Order to Slash Emissions Faster (2)(抜粋)
--取材協力:Will Mathis.
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Patrick Van Oosterom, Cagan Koc