【#佐藤優のシン世界地図探索64】プーチン大統領の逆襲
佐藤 それは違います。北朝鮮の拉致問題は日本の国益と直接関係があります。なぜなら、日本国民の人権と日本国家の主権が直接、侵害されている事例だからです。日本は直接的な当事者だから、この問題は放置できません。一方で、ロヒンギャやウイングルの問題では直接の当事者ではありません。 つまり、「最重要価値を東アジアの平和にする」と言えばいいわけです。平和が第一義的に守られ、その条件下で基本的な人権を尊重するのです。 ――東アジアがヤバいことになりそうならば、敏感になる。 佐藤 だから、まずは自分のことを考えた方がいいんです。分かりやすくいえば、人のケツを拭くことではなく、自分のケツだけ拭いたらいいということです。「汚いケツをこっちに回さないでください。ウチは自分のケツを拭くので精一杯です」とね。自分のケツは皆、自分で拭こうというだけです。 ――分かりやすいですね。 佐藤 これが外交の基本です。隣の家で葬式をやっているのに、香典を持って行かないとしたら変な人だと思われますよね。変な人だと思われたら自分に不利益になるから、香典を持っていきます。 それから、夏祭りの奉加帳が回ってきた時にお金を出したくなくても、「千円だけ出しとくか」となるのはご近所さんの手前ですよね。 ――ただ、地球の裏側から「祭りがあるから金出しな」と言われても、「ちょっと遠くていけません」となる。 佐藤 そう。だから、物理的な距離がすごく関係してくるんです。 ――ご近所付き合いを考えて人のケツを拭かない。そう単純に考えていれば、もう解決ですね。 佐藤 だから今回は、企業舎弟のような会社のようなものがあると考えてみます。 ――それ、北朝鮮ですね。 佐藤 そうです。その会社が最近、大きな広域団体の組長と会談を行ないました。 ――東組のロシアでございますね。 佐藤 そこに「米組のパシリの日本がカチコミに来るかもしれない」といういい加減な情報が入りました。 ――ヤバいじゃないですか! 佐藤 日本の様子はよく分からず、「とりあえず備えておこうぜ」という状況だったのが、「これはどうも完全にカチコミがあるらしいぜ」となってしまいました。そしたら「先にやっちまえ」となります。 なので、こういう事態が起こらないように、普段から状況を周知しておくことが大切です。「お隣さんはカチコミするつもりは全然ない」と分かってもらうんです。そのための外交です。 ――普段からお近所付き合いをちゃんとやって、自分で自分のケツを拭き、汚いケツは外に向けないようにする。 佐藤 ただし、お互いの立場があって喧嘩せざるを得ない場合は仕方ありません。その時は負けないように最善を尽くすのみです。いずれにせよ、誤解から戦争が起きるのを避けないといけません。お互いに口を聞かない、交流を避けるとか、そんな状態が続けば、誤解から戦争になってしまう可能性が排除されなくなります。 次回へ続く。次回の配信は2024年7月5日(金)予定です。 取材・文/小峯隆生