大幅利上げでインフレ抑制も 成長犠牲で綱渡りのトルコ 谷村真
現政権の経済チームは、経済成長を犠牲にしてもインフレ率を引き下げることにコミットしているが、エルドアン大統領がいつまでこれを許容するかは不透明感が残る。また、冒頭で触れたエルドアン大統領の独自外交路線は欧米とのあつれきを生みかねない。確かに、1996年には6%に過ぎなかった中露向けの輸出シェアが足元では18%に拡大しており、BRICSとの関係強化は理にかなっているように見える。 しかし、欧米のシェアは低下しているものの、依然として65%を占める重要な貿易パートナーであり、海外からの証券投資残高の8割も欧米からである。バランス感覚に優れたエルドアン大統領が欧米との関係を極端に悪化させる可能性は低いが、万が一そうした事態が生じた場合は、経済安定化に大きく貢献していた資本フローの逆流が起きるリスクがある。 (谷村真〈たにむら・しん〉国際協力銀行外国審査部シニアエコノミスト)